佐渡への旅(最終回)

二ツ亀海水浴場
大野亀を後にして、二ツ亀海水浴場へ向かう。海開きを前にした海水浴場は、自分が訪れた時間が夕刻だったということもあって、どことなく物悲しいような雰囲気を漂わせていた。あと数日もすれば、夏をまちわびた子供達の歓声で賑わうのだろうけど、今はまだ静かなままだ。

二ツ亀海水浴場は引き潮の時だけ、奥の島への道が表れ渡れるようになるのだけど(写真の中央部分の道が、島までつながっていく)自分が到着した時は、潮が満ちていて島へは渡れなかった。なので、海と陸の境目ギリギリまで行って海水に手を浸してきた。ちなみにここは「日本の海水浴場100選」に選ばれているとのこと。目の前に堂々と横たわる山。引き潮の時にだけ表れる道。そして、見る角度で色を変えていく透き通る美しい海水。たしかに、選ばれるにふさわしい海水浴場だと思った。朝一番でここにやってきて、夕方まで風景が変化して行く様子を眺めていたい。ゆったりと時間をかけて、海を楽しみたい。そんな風に感じる場所でした。

海水浴場から駐車場へ戻る途中にキャンプ場があった。そこにはバイクが一台と一人用のテントが一張設置されていた。夜に向かって、少しずつ強くなってきた風がテントの屋根をしきりに叩いている。出発の時に宿のおかみさんが「今日は大雨警報が出ていますよ」と言っていたから、もしかすると今晩はテント泊にはちょっとせつない夜になるかもしれない。それでも・・・そう、テントの旅には無性に惹かれる「何か」があるんですよね。地面の上に直接寝転んで眠る感覚とか、感触とか、あれとかそれとか。今年の夏は、ひさしぶりにテント泊をしてみたい。そんなことを考えながら車に戻り、今夜の宿へと向かいました。

宿の料理もおいしく、清潔な部屋でのんびりと過ごしているうちに一夜が明けた。どうして旅の夜は足早に過ぎていくのだろう。日常の「くだらない」時間を貯金して、旅の日に活用できたのならと毎回思う。実際には、そんなことはできるわけはないのだけど、わりと本気で思う。

愛想の良い宿のおかみさんに見送られながら、帰りは内海府海岸周りで両津港を目指す。「宿から両津港へは、だいたい1時間くらい」と聞いていたので、あせらずのんびりと走ることにする。

目の前に表れてくる海岸はどれも美しかったから、何度も車を止めて眺めていたくなる欲求を抑えるのが大変だった。しかし、レンタカーの返却時間は決まっているわけで、残り時間を確認しながら適度に休憩をおりこみつつ、快適な海岸沿いの道を(すれ違った車は10台以下だったと思う。ほんとうに快適なドライブだった)予定時間前に走り抜け、無事両津港に到着することができた。レンタカーを返却する前にガソリンを満タンにすると、なんと8Lしか入らなかった。これが自分のラシーンだったならば、1.5~2倍くらいにはなったかもしれない。最近のコンパクトカーの燃費の良さを実感しながら、2日間の相棒とお別れをした。ありがとうデミオ。君は優秀だよ。

フェリーの出航まで時間があったので、両津港前のカフェでお茶を飲む。昭和を思わせる店内のインテリア。「とりあえず、うちは長い事ここで、こうやってきましたから」という感じのオーナーの立ち振る舞いがいい感じのカフェだった。そして今となっては、なぜ自分でもそう感じたのかはわからないのだけど、メニューを見た瞬間にウィンナーコーヒーが無性に気になってしまい思わず注文してしまった。ウィンナーコーヒーを頼んだのなんて、もしかすると10年ぶりくらいかもしれない。15年かもしれない。とにかく記憶にないくらい久しぶりに注文をしてしまった。もしかすると佐渡という、自分にとって非日常の場所が「普段とは違うものを注文しなければいけない」と無意識に思わせたのかもしれない。そういえば、佐渡に来てからコーヒーを全く飲まなかった。普段は1日に何杯も飲むのに、飲みたいとさえも思わなかった。佐渡で唯一口にしたコーヒーが、ウィンナーコーヒーになるってことか。よし次にウィンナーコーヒーを飲む事があれば、その時は今日の佐渡のことを思いながら飲もう。

そんなことを考えつつ、港内の売店でお土産を購入してから、12時40分出港のフェリーに乗船。さようなら佐渡。昨日到着したのが11時55分だから、ちょうど丸々1日をこの場所で過ごしたことになる。体感速度としては6〜7時間くらいしか滞在していなかったような気さえする。楽しい時間は一瞬だ。

名残惜しさを感じながら、フェリーに乗り込む。帰りは行きの時よりも2~3割ほどお客さんが多いように感じた。船内には「大変混み合っていますので、横になっているお客様にはご協力いただいて・・・」というようなアナウンスが流れていたから、実際に混んでいたのだろう。それでもみんな、上手に身体を曲げたり丸まったりしながら、スペースを確保して横になっていく。自分は、行きと同様に出航早々船室の外へ出た。

うみねこ
さすがに帰りの2時間30分は新鮮さも薄れるし退屈するだろう、と思っていたのだけど、意外にもウミネコを観察しているのが面白くて、むしろ行きよりも短い時間に感じられたくらいだった。

とりわけ、胸のあたりに傷(のような)印がついているウミネコを見つけてからは「あいつはどこへ行っただろう? おっ、戻ってきたぞ」というような感じで、海の友達ができたような気分になった。たぶん、あいつは今日も日本海の空を飛び回っているのだろう。上手に餌をとって、元気に毎日を過ごせたのならいいのだが、と思う。




※フェリーのデッキから撮影したムービー。海の色が「碧い」です。

さて、1泊2日の佐渡への旅。ほんとうは、もっと書いておきたいこともあるのだけれど、今回の旅の記録はこの辺りで止めておこうと思います。佐渡への計画を立てている段階では「佐渡は近いようで、遠い場所」と思っていたけれど、実際にこうやって旅をしてみると「思ったよりも、近い場所。意外と簡単に行けそうな場所」という印象へと変わっていた。フェリーの手続きも、レンタカーの予約も、少しだけ手間がかかるかもしれないけれど、それ以上に得られるものもあるし、手間をかけるだけの価値がある場所だと思う。今回は、ほんとうに「行ってよかった」です。佐渡への移動の時間も合わせて、あっという間の時間でした。たのしかったぜ。


※フェリーのデッキから撮影したムービー。


佐渡への旅 一覧

佐渡への旅(1)フェリーで移動
佐渡への旅(2)尖閣湾を遊覧船で観光
佐渡への旅(3)外海府海岸を車でドライブ
佐渡への旅(4)大野亀から二ツ亀海水浴場へ
佐渡への旅(最終回)二ツ亀海水浴場から両津港へ

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