春日大社で万葉粥を。はじめての奈良旅(6)

春日大社へ行こう


東大寺から春日大社へ徒歩で向かう途中、閉店している店の中をドア越しに覗き込んでいる鹿がいた。それは「なんだ、まだ開いていないのか」とでも言いたげな仕草に見えた。その様子を見ていた外国人の方が、僕たちに話しかけてきた。よく聞き取れなかったので「何と言っていた?」と連れに確認すると「入ろうとしているね、と言っていた」とのこと。「聞き取れたんだ」「だって日本語だったよ」。

そう、僕は英語で話しかけられていると思い込んでいたので、自分の拙い語学力で聞き取ろうとしていたのだが、相手は日本語で話していたのだった。思い込みの恐ろしさよ。相手が日本語なのにこちらが中途半端な英語で答えていたら、だいぶ間抜けだったろう。Yes! とか、I think so. とか、適当なことを答えなくて良かった、などと考えながら歩く。

万葉粥とよもぎ団子


東大寺から10分ほども歩いたところで「春日荷茶屋」の前に到着した。ここは旅行前にガイドブックを見ていて気になっていた店。「もうすぐ昼だし、甘いものを少しだけ食べようか」と立ち寄ってみることにする。ところが、メニューの「大和名物膳(万葉粥、柿の葉すし、葛餅のセット)」を見ているうちに「万葉粥を食べてみたい。柿の葉すしと葛餅も」となり、せっかくなので春日荷茶屋」と「よもぎ団子」をひとつずつ頼んで、連れと二人で食べることにした。



うまい。春日大社の境内というシチュエーションと、午前中の静かな雰囲気の中で、おいしいものを少しずつ食べるという贅沢。若い時の体力まかせで強行突破の旅もおもしろかったけれど、こうやって、お茶がおいしく感じる旅、もいいものである。年齢を重ねるというのも、それはそれで悪くないものだ。そんなことを考えながら、外の景色を眺めたり雑談をしながら、ゆっくり過ごすことができた。うまかったです。



もう少しゆっくりとしていたいけれど、旅の時間には限りがある。店を出て、あらためて春日大社へと足を進めることにする。二之鳥居を過ぎたあたりから、参道は参拝客の姿で賑わいを見せてきた。ふと前方を見ると、石灯籠の間から鋭い視線を感じた。やや、あれは! 鋭くクールな視線で、こちらの様子を伺っている鹿と目が合う。「こいつは、せんべいを持っているのか? いないのか?」そう、僕たちはこうやって、彼らにしっかりと「観察」されているのである。


御蓋山浮雲峰を遙拝する

そんな鹿達の熱い視線を感じながら、石段を上がり南門をくぐると春日大社の境内に到着する。右手にある「特別参拝」へ向かい、受付を済ませて奥へと進んでいく。鮮やかな朱色の回廊を通り、多くの人達が寄進されてきた燈籠を眺めながら、ぐるりと回っていくと「御蓋山浮雲峰 遙拝所」に着く。手を合わせ遥拝している僕たちの横を、風がさわさわと横切っていく。ふと、今回はいい旅だったな、としみじみとした気分になってきた。まだ旅は終わっていないのだけど、今回の旅は、きっと最後まで気持ちよく過ごせるだろう。そんな気分になったのだった。


そして春日大社といえば「鹿みくじ」である。鹿が「どうぞ」と、おみくじをくわえて差し出してくれる様子が可愛らしい。ひとつひとつ少しずつ表情が違うので「さて、どの子にしよう」と選ぶのも楽しい。そして僕たちが奈良から仙台に連れてきたのは、この子でした。

参考:春日大社ホームページ

はじめての奈良旅(7)志賀直哉旧居へ

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