【読書】「あなたは本当に真面目なんですか」夏目漱石「こころ」より
「あなたは本当に真面目なんですか」 今回は、夏目漱石の「こころ」という作品の中から、ある場面を抜き出して皆さんに紹介してみたいと思います。 この 「こころ」という作品には「私と先生」という人物が登場します。 「私」は、「先生」に対して「先生は、何かを隠しているのではないか?」と、感じています。そして、その隠していること教えてほしい、教えてもらうことによって人生の教訓にしていきたいと考えています。そして「先生に、ぜひ教えて欲しい」と頼むのですね。 しかし、先生は「あなたに教えることではない」と教えてくれません。それでも「私」は諦めることはできなくて、なんとか教えてもらえませんか、と懇願していきます。今回紹介するのは「私」が「先生」に「隠していることを、教えてほしい」と、頼んでいる部分を抜き出して紹介してみたいと思います。 「ただ真面目なんです。真面目に人生から教訓を受けたいのです」 「私の過去を訐いてもですか」 訐くという言葉が、突然恐ろしい響きをもって、私の耳を打った。私は今私の前に坐っているのが、一人の罪人であって、不断から尊敬している先生でないような気がした。先生の顔は蒼かった。 「あなたは本当に真面目なんですか」と先生が念を押した。「私は過去の因果で、人を疑りつけている。だから実はあなたも疑っている。しかしどうもあなただけは疑りたくない。あなたは疑るにはあまりに単純すぎるようだ。私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたははらの底から真面目ですか」(夏目漱石「こころ」三十一より抜粋) 「先生」が「私」に向かって「これから私はあなたに自分の過去を話そうとしている。私の秘密を話そうとしている。それを受け取るあなたは、本当に真面目なんですか」と話しかけています。 「真面目」という言葉が読んでいる私達にもまっすぐに響いてくる。「先生」が何かを真剣に伝えようと決断した雰囲気が伝わってくる 素晴らしい場面だと思います。 小さな好奇心が「過去も現在も未来」も脅かしてしまう 私達には 「誰かの秘密や、過去」を知りたいという欲求 がありますよね。好奇心といいますか、そのような感情があると思います。そして実際に、皆さんが今まさに手にとっている、小さなスマートフォンが一台あるだけで、調べたいと思っ