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ランプの宿青荷温泉 初夏の青森を巡る旅(5) 

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ランプの宿 青荷温泉へ 2日目の宿は、秘湯「ランプの宿青荷温泉」だ。この宿を選んだ理由は、偶然に予約サイトで見つけたからなのだけど、予約が完了した後に様々な雑誌で紹介されていることを知り評判が良いことを知り、期待感が高まっていた。 ここの宿の特徴は、その名前の通り照明関係が、すべて「ランプ」であるということ。部屋にコンセントもないからテレビなどもない。昔ながらの秘湯の風情が楽しめる宿ということだ。いわゆる現代の文明の利器が存在しない場所なわけで、そのようなところでどのような時間を過ごせるのか、とても楽しみにしていた。 宿への道は、高速道路の黒石ICから102号線へ向かい、そこから山の中へと入っていく。登山をする時に通るような、細い道を想像していたのだけど、きちんと舗装されていて(急勾配のところはありましたが)回りの風景を楽しみながら走ることができた。 宿に到着したのは午後6時ころ。すでに駐車場は満車状態で、あと2台ほどしかスペースがない。人気がある宿なのだな、と思いながら受付に向かうと「すでに食事が始まっているので、お早めに」と言われる。もう食事? お早めに? と、食事の場所になっている大広間をのぞくと、すごい人の数。100人以上は、いるかもしれない。すでに、ほとんどの方が食事を始めていらっしゃった。ランプのぼんやりとした明かりしかなくて周囲が良く見えないから熱気を強く感じる。修学旅行の時に、大勢で食事をした時のことを思い出す。なんとなく懐かしい気分になる。 ホタルが飛ぶ池へ 食事を済ませた後、宿の人に「午後の8時くらいになると、ホタルが飛ぶ池がある」と教えてもらっていたので、風呂にはいる前に行ってみることにする。少しの間、じっと立っていると、蛍がスーッと横切るのが見えた。そういえば、と思う。自分が住んでいる仙台も、20年以上前には、車で郊外に移動をすれば、蛍を見ることができた。道路に座って静かにしていると、やがてあちらこちらに小さいけれど強いエネルギーがこもった明かりが灯り始める。空中を横切るもの、草の上にとどまるもの、そして、自分達の服の上で輝くもの。目の前で、たくさんの蛍を見ることができたものだ。 もちろん、ここ10年くらいの間に、蛍の姿を見る事はできなくなった。そして先の地震で

青森県立美術館 初夏の青森を巡る旅(4) 

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青森県立美術館へ 八甲田山から下山し、次に向かったのが「 青森県立美術館 」。途中、休憩をいれつつも、車で約40分ほどで到着。思ったよりもスムーズに移動できて、ほっとする。 ここには、奈良美智さんの「あおもり犬」が展示されている。以前、何かの雑誌で見た時から「いつか、この作品を、この目で直接見てみたい」と考えていたので、今回の訪問はすごくたのしみにしていた。 美術館に到着して、まず驚いたことは、その敷地の広さ。とにかく広い。駐車場の端から、建物の方を見ると、はるか遠くに霞んでみえるくらいだ(←これは、おおげさ) 今回、青森の施設をいくつか回ってみたけれど、どれもゆったりとスペースを確保していて、すごく気持ちがいい。ここでなら休日の一日をゆったり過ごせそうだ、という気分になる。開放感のなか、駐車場から建物の方へ向かう。 まず最初に感じたのは、建物の構造が「複雑」になっていること。エレベーターで下に降りたり、階段で上にあがったり、右に行ったり左にくねったりと、ワンフロアで完結するのではなく、あちらこちらへ移動するような構造になっている。これが、なかなか楽しい。館内の案内図を見ながら回るのだけど「今、自分はどこにいるのだろう?」「次は、どこへ行けばいいのだろう?」と、ちょっと迷路に迷い込んだ時のような感覚になりながら館内を歩き回る。 あおもり犬と対面! 待望の「あおもり犬」の展示スペースまでの道のりも「この角の先かな?」「これが正しいルートなのか?」などと考えながら、建物の裏手に回って階段を上がっていく。 そして、目の前に表れたのが・・・ これだ! 作品をとりかこむようにして、たくさんの人達が写真を撮影している(あおもり犬は、撮影可)。カシャッ! ピロリン〜と、あちらこちらからシャッター音が聞こえてくる。 もしかすると作者の奈良さんは、こんな風にして、たくさんの人に囲まれている風景も含めて、この作品を制作されたのではないだろうか。あおもり犬だけだと、なんとなく物思いにふけっているような感じに見えるけれど、みんなに囲まれていると、ちょっと照れているような、わざと

八甲田山へ 初夏の青森を巡る旅(3)

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ホテルで、夏の高校球児に出会う 初夏の青森を巡る旅も2日目に。 昨晩、宿泊したホテルでは、夏の高校野球の予選に参加すると思われる、高校球児達と同宿だった。あちらこちらから「コンチワー」「チワッス」と元気な挨拶が飛び交っていて、ホテル全体が合宿所のようになっていた。 正直「これは、夜も騒がしいのだろうな」と思っていたのだけど、実際は夜の10時には、すっかりと寝静まり、物音一つ立たないという徹底ぶり。もちろん先生の怒号も飛び交わない。ずいぶん指導が行き届いているのだな、とひとしきり関心する。 就寝直前に、野球部のマネージャーとおぼしき女子が、部屋の入口のところで男子部員と話していた。その前を通ろうとすると、僕の姿に気が付いた男子部員が、女子を追い返すようにしてドアを閉めた。ドアを閉められた女子マネージャーは、何も言わず、すぐに自分の部屋に戻っていった。2人が部屋に入ってしまうと廊下にはもう誰もいなかった。 そういえば、と思う。この予選が終わってしまえば、3年生は引退である。おそらく多くの生徒が、ここで本格的な野球の練習を止めることだろう。子供のころから長い時間かけて取り組んできた野球が、あと数日で終わりを迎えようとしている。その瞬間、彼らの頭の中にはどのような感情が交錯するのだろう。 八甲田ゴードラインを散策する 翌日、ホテルで朝食を済ませてから、 八甲田ロープウェー へと向かう。ロープウェーの山頂公園からは、「 八甲田ゴードライン (ゴールドラインではなく、ゴードライン。誤字ではないので念のため)」というトレッキングコースが整備されていて、そこを歩くのが目的だ。30分コースと60分コースの2種類があって、自分は迷わず60分コースを選択。 60分コースは湿原の回りを、ぐるりと一周するように設置されていて、湿原や高山植物を眺めながら、楽に歩くことができる。当日は、曇り空でガスが出ていたのだけど、風が吹く度に湿原の上をガスが動いていく様子は、とても幻想的でやわらかで、見に来てよかった、という気分になった。 ルートも整備されていて、スニーカーでも十分に歩けるコースなので、興味がある方は、ぜひ60分コースまで足を伸ばされることをオススメします。もちろん、水やタオルなどの最低限の装備はお忘れなく

奥入瀬渓流&十和田湖観光 初夏の青森を巡る旅(2) 

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思い出の奥入瀬渓流へ 美術館でアート作品を堪能した後、ひとまず十和田市内のホテルにチェックインする。鍵をもらい、今晩の寝床を確保してから、次に向かったのは奥入瀬渓流。 途中にある道の駅などに立ち寄りつつ、1時間ほどで到着。 奥入瀬渓流 には、子供の頃(小学校の1年生の時)に家族で遊びに来たことがある場所。その時は、なかなか目的地に到着しなくて車の中で退屈してしまった、という記憶しか残っていない。 車を運転している父親に「まだ?」と何度も質問した記憶しかない。そんな「退屈な思い出」の場所に、今度は自分の意志で、わざわざやってきているというのも、なかなか面白いものだな、と思ってしまう。 ホテルのスタッフの方に「休日は渋滞するので、気を付けてください」と言われていたのだけど、思いの外空いていて自分のペースで走ることができた。木漏れ日の中を、ゆっくりと車で走り抜けていくと、まさに「観光地に来ている」という気分満載で、自然と笑顔になってしまう。当日(7月中旬)は、窓を開けて走っていると、ちょうど心地よい気温だったので、少しでも天然の空気に浸るべく、車の窓を全開にして顔に風を当てながら走った。 子供のころの記憶と、目の前の風景がリンクする そんな風にして、流れて行く風景を眺めていると、なんとなく「これは見た事がある景色だ」と感じる場所がある。実際に、記憶に残っている可能性は少ないし、単なる思い込みなのかもしれないけれど、子供の頃の記憶かもしれない映像と目の前の風景がリンクする瞬間は、なかなか面白い感じがした。子供の頃の感覚に、ほんの少しだけ戻れたような気分になった。 ちなみに、 奥入瀬渓流の遊歩道 を歩くと、全部で5時間くらいかかるそうだ。このような場所は、徒歩であちらこちらを眺めながら、ゆっくりと歩く方が何倍も楽しいし、発見があるだろう。レンタサイクルなどもあるらしいので、今度は別の季節にやってきて、全コースを歩いてみたいと思いました。 奥入瀬渓流から、十和田湖へ 奥入瀬渓流を通り抜けると、そこには 十和田湖 が広がる。 遊覧船乗り場の駐車場に車をとめて、湖畔に近づいてみる。桟橋で釣りをしている人がいる。携帯用の椅子に腰掛けて、ずっと湖畔を眺めている老夫婦がいる。あまり音は聞こえない。

十和田市現代美術館 初夏の青森を巡る旅(1−2)

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7月の青森へ 十和田市現代美術館(1の1) 美術館に入る前の段階で、軽く興奮状態となってしまい期待値が高まるなか、表面的には冷静さを保ちつつ館内へ入場する。最初の部屋で、自分達を出迎えてくれたのは「ロン・ミュエク スタンディング・ウーマン」。 旅行のガイドブックなどで、何度か目にしていた作品ということもあり「ようやく会えた」という気分になる。 近くに寄って、本当に温かな血が流れていそうな生々しい血管を見ていると、夜になり皆が帰宅した後に、やれやれこれで本日の仕事も終了だわ、と大きな手で背中のあたりをボリボリと掻いたりするのではないか、いやもしそうだったとしても、全然驚かないなと思ってしまうような感覚になる。 自分の斜め前のあたりで、両親に連れられてきた、5歳くらいの女子が不安そうな表情で作品を見上げている。この子くらいの年齢だと、恐怖を感じるのだろう。夜に夢に出てくるのではないだろうか、と余計な心配をしてしまったりするほどだった。 そして次の部屋は・・・。 と、ひとつひとつの作品の感想を書いていきたいところだけど、これから十和田市現代美術館へ行かれる方のために、感想を書くことは控えておきたいと思う。 このような現代アートの面白さは、 先入観(情報)なしに作品の前に立った時に感じる印象 だと個人的に考えているので、僕の偏った情報は避けたほうがいいと思うからだ。 ただひとつだけ書かせていただくと(というよりも、書きたくてしかたがない訳だけど・笑) 「ハンス・オブ・デ・ピーク ロケーション(5)」 は圧巻だった。もし自分がアーティストだったなら、このような作品を制作したのではないか、とさえ思った。それがあまりにも楽しくて、しばらく「作品の中」に浸っていたところ、自分より前にいた男女の2人が「これもアートなのか?」「そうなんじゃない?」と、話しているのが聞こえてきたのことが、また面白かった。 「これもアートなの?」 自分にとっては「最高のアート」でも、ある方にとっては「これがアート?」という存在になる場合もある。どちらが良いとか悪いとかではなく、 自分と他者との好み(感覚)の違いを、はっきりと感じることができるのも、現代アートの醍醐味のひとつ なのかもしれない、と2人の感想を聞いていて考えたのだった。 とにもかくにも、 十和田市現

十和田市現代美術館へ 初夏の青森を巡る旅(1)

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7月の青森へ(1) 十和田市現代美術館 7月の連休を活用して、青森県へ行ってきた。旅の日程が確定したのが、約一週間前。いそいでホテルの予約などをして、前日に荷造りをして、バタバタと早朝に出発。 東北自動車道から八戸自動車道→百石道路→第二みちのく有料道路を通り、無事青森へ到着。ところどころ、渋滞したり流れが悪くなっていたこともあったのだけど、 約4時間ほどで到着 。ほぼ予定通り。わくわくしながら、一般道路へと降りていく。 最初の目的地は「 十和田市現代美術館 」だ。ここは2008年4月に開館したばかりの、新しい美術館。 「ひとつの作品に、ひとつの展示室」 というコンセプトや「開館後わずか4日で入館者1万人突破」などという情報を目にしていたので「青森に行ったら、まずここへ」と決めていた。 自分が持っている古い青森の地図には、十和田市現代美術館は掲載されていなかったので、iphoneのマップを使ってルートを確認する。昨日の仙台の気温は30度を余裕で越える状態だったけど、こちらは涼しくて、とても過ごしやすい。半袖だと少し寒い気がするくらいだ。 十和田市現代美術館へ続く県道は 「十和田観光電鉄」 と並走して走る形になる。ベストポイントと思われる場所には、かなりの確率でカメラを構えている人達がいた。あまりにもカメラマンの人数が多かったので、青森には電車が好きな人が多いんだな、思ってしまうくらいだった(すみません、単なる思い込みです)。数人で談笑しているグループや、ずっとファインダーをのぞき込んだまま動かない人や、線路ギリギリまで身を乗り出してアングルを考えている人達の横を通り過ぎ、30分ほどで十和田市現代美術館へ到着。 フラワーホースと対面 館内の入口に設置されている 「チェ・ジョンファ フラワーホース」 が見えた瞬間、一気に移動の疲れが吹き飛んでしまう。道路の向こう側の野外芸術文化ゾーンには草間彌生さんの作品の姿も見える。この空間全体がアートスペースになっているのだ。「ここに来てよかった」と、思う。建物の前を通っただけで、すでに30%くらいは満足してしまった。 残りの70%を埋めるべく、いそいそと駐車場に車を移動し、せかせかと美術館へ向かう。まず最初に、 野外芸術文化ゾーン を、ぐるりと回ってみることにする。細かなところまで、細工が

深夜の連続ツイート 3人の運転手

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ここ数日、すこしだけ(ほんとうに少しだけ)入り組んだ事柄があって、頭の奥がつかれているような感じがしていた。そろそろ、この辺りで休憩をした方がいいと思い、次の予定まで40分ほど時間があったので、駐車場に車をとめて仮眠することにした。 (つづき)そこは日陰になっていて、風の通り道になっていて、とても気分がよかった。途中のコンビニで買ってきたアイスを食べてから、シートを倒して目を閉じた。自分でも驚くほどあっさりと、眠ってしまった。カコン、とスイッチが切り替わるように眠ってしまっていた。 (つづき)話し声で目が覚めた。少し離れたところで、タクシーの運転手が3名ほど集まって話をしていた。時折、笑い声が混じっていたから、楽しい話をしていたのかもしれない。またタバコが値上がりするらしいぞ、まいったなあ、などと話していたのかもしれない。 (つづき)只今、午前2時。これで深夜の連続ツイート終了。今年も7月。残り6ヶ月。後半は、少し体を動かそうかなと思っている。ザックを背負って、近場の里山に登って、頂上でコーヒーを飲もうかなと思っている。もしもそこで、山の友人達に出会えたのなら、どんなに楽しいだろうと思っている。