もしも、18歳に戻れたのなら。
自分の唯一の自慢といえば「体が頑丈にできている」ということ。今までに、大きな病気もしたことはないし、入院するようなケガをしたことも、ない。せいぜい、部活動で足を痛めて、2〜3回通院したとか、その程度のものだ。
そんな自分でも、年に1度くらいのペースで、体調を崩すことがある。腹が痛いとか、偏頭痛が、ということではなく、「なんだか、体がズシーンと重い」感じになり「ベットに横になっていても、腕を上げるのさえ、おっくうだ」というような、状態になる。上から、重たい鉄の固まりのようなものに、ぎゅーっ、と押さえ込まれているような、体の周りを360度、冷たい鉄で囲まれたような、感じになる。その時は、全く身動きができなくなる。ただじっと、それが通り過ぎていくのを、横になって待つしかない。目を閉じて、眠り続けるしかない。
そして、今日が、ちょうど「それ」の日だった。最初は、夏バテかな、と軽く考えていたのだけど、どうにも体が動かなくなり、何も考えられなくなってしまったので、思い切って3時間ほど、横になって休むことにした。幸いなことに、今日は、夕方のミーティングまで、予定がない。休める時に休む。これも仕事のひとつだ、と考えることにして、よっこらせとベットの上に横になる。
特に眠かった訳ではないので、カーテンを開けて、窓から見える空を眺めていた。真っ青な空と、白い雲が流れていた。窓は閉め切っていたので、外の音は聞こえなかった。とても静かで、いい午後だと思った。じっと、そんな風景を眺めているうちに、ふと、高校生の頃に、学校を休んで(サボッて)空を眺めていた時のことを、思い出した。確か、あの時も、こんな感じの空だったなと思った。同じような季節の同じような時間に、こうやって空を見ていたよな、と思った。
もしも、18歳の頃に戻れたのなら、 と自分に問いかけてみる。自分は、何をするだろう? 答えはすぐに思い浮かんだ。戻ったとしても、同じことをやるだろうし、そもそも戻りたいとも思わない。18歳は一回でいいし、あの18歳が、自分にとってのベストだったような、気がする。
もちろん、18歳の頃の自分が、すばらしい人生だったとか、後悔のない人生だったという訳ではない。あれもすれば良かった、これはこのようにすれば良かった、ということは、たくさんある。思い出しただけで、消しさってしまいたくなるような、記憶も(わりと、たくさん)ある。でも、たとえやり直したとしても、結局は同じような方向に進み、同じような結果にたどり着いてしまうのではないかと、思う。同じ友人と出会い、同じ女性と付き合って、同じようにギターを弾いて、同じようにバイクで転んだのではないかと思う。
これが、20代の頃の自分ならば「もどりたい」と、即答したことだろう。もどれないまでも「あの時のアレと、その時のコレだけでも、再挑戦させてくれ」と、具体的に希望を告げたことだろう。でも30代の今の自分には「もどりたい」とは思えなかった。めんどうくさいとか、もどってもムダ、ということではなくて、ただシンプルに「あれが、きっと自分のベストだ」と、素直に考えている自分がいた。
それは、身の程を知った、ということなのかもしれないし、あの頃の友人や彼女に感謝しているから、なのかもしれない。そして、もしかすると、これは案外「しあわせ」なことなのかもしれないな、と考えている自分がいる。あれはあれで、よかったじゃないか。それもこれも、今の自分を作っているじゃないか。それより、これからのことを考えよう。来週の約束のことを、楽しみにしよう。でも、もしかすると、40代になった途端に「もどりたい」と、思ってしまうのかもしれないな。50代の時は、どんな風に考えるのだろう。そして・・・む。
30度を越える、記録的な暑さがまだまだ続いている、9月の午後。エアコンが効いた部屋で、ベットにうつ伏せになり、顔だけを窓の方に向け、動かない体をギシギシ言わせながら、そんなことを考えました。