【名言】「日本より頭の中のほうが広いでしょう」夏目漱石 三四郎【名作文学を読む】

夏目漱石「三四郎」を読む

「日本より頭の中のほうが広いでしょう」夏目漱石【三四郎】


今回紹介するのは、夏目漱石の三四郎の一場面です。三四郎には、広田先生という登場人物が出てくるのですが、この広田先生と主人公の三四郎が電車の中で会話をしている場面です。

 「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。 「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ」(夏目漱石 三四郎より)


「日本より頭の中の方が広いでしょう」この一文が、とても印象的な場面ですね。私たちは日々の生活をしていると、自覚しているよりも速い速度で思考が狭くなっていきます。考えるのが面倒になり、今自分が理解できる範囲で世界を切り取ってしまいます。

そのような時に、広田先生の「日本より頭の中の方が広いでしょう」という言葉を読んでみると、確かにそうだなと。精神世界といいますか、発想や想像力などは、現実的な制約がないわけですから、どこまでも広げていくことができる。そのようなことを、ぼんやりと空を見上げるようにして考えてみると、少し視点が高くなるといいますか、背中を押してもらえるようなそんな気分になってきます。
 

三四郎の「時代背景」から

では、もう少し、三四郎が書かれた時代背景などを考察しながら、もう少しこの場面を掘り下げて考えてみたいと思います。三四郎は、1908年に朝日新聞に連載されました。日露戦争が1904年ですから、戦後の変動期であり西洋の文化や情報が怒涛のごとく押し寄せてきていた時代ですね。

世の中が、意識的無意識的に、一つの方向に向かって進んでいこうとしている。強烈な勢いで日本が変容している。そのような時代の中で、夏目漱石は「とらわれちゃだめだ。」と広田先生に言わせています。つまり作品を通して、日本の現状と社会が進んでいる方向性に批評を行っているわけです。 作品の中でも、


「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、「滅びるね」と言った。――熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いにされる。(夏目漱石「三四郎」より)


と、 痛烈な批評を行っています。「滅びるね」これはおそらく、漱石自身の考えだったのでしょう。イギリスに留学経験もあり、また高い視点から物事を俯瞰し考察する力がある漱石には、当時の日本の状況は「滅びるね」といったような状況だったのかもしれません。 

三四郎は、100年以上前に書かれた作品ですが、現代の私たちが読んでも設定や物語が面白く、ぐいぐいと引き込まれていくすばらしい作品ですけれども、その背後には、夏目漱石の「批評の視点」が存在したのだということを意識しながら読むことで、新しい発見があると思いますし、さらに夏目漱石の「すごみ」を体感できるのではないかと思います。


参考「夏目漱石 三四郎あらすじ解説」


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