宮城県美術館「新しい美術の系譜」
宮城県美術館の「新しい美術の系譜」へ行ってきた。
今回の目的は、ロレッタ・ラックスの作品を観ること。ある雑誌で、彼女の作品を目にしてから、ぜひ一度本物を観てみたいと思っていたので、今回は、とても楽しみにしていた。
展示されていたのは「ドロテア」と「アイルランドの少女たち」の2作品。ちらっと観ると、絵画のように見えるけれど、良く観ると写真。かわいらしい女の子が描かれているように見えるけど、しばらく見ていると、妙に不安を感じる作品。やわらかだけど、硬質なトーン。ずっと見ていたいような、すぐに目を逸らしたくなりそうな世界観。そんな、矛盾した雰囲気が同時に存在する、不思議な作品だった。
自分のレベルでは、この作品に、どのような画像処理がほどこされ、仕上げられているのかは、わからない。わからないけれども、とにかく、膨大な時間がかけられ、丹念に仕上げられているということが、ひしひしと伝わってくる。その、絶対的な作業量が、自分が感じた「不思議な感覚」の源泉となっているのかも、しれない。
平日の閉館まぎわの時間帯と、いうこともあり、観客がまばらだったので、作品を独り占めして、じっくりと楽しませてもらった。この2作品を観るだけでも、充分に足を運んだかいがあったと、思った。あまりにも、離れがたくて、閉館ギリギリまで粘ってしまい、あやうく次の予定に、遅れてしまうところだった。
美術館を出て、近くの高校の前を車で通ったところ、校門の近くで、ダンスの練習をしている女子高生の姿が目に飛びこんできた。体を左右にリズミカルに揺らし、飛び跳ね、ニコニコと笑いながら、そばに立って見ている友達と話をしていた。何かのイベントで発表でもするのだろうか。それとも、ただ踊っていただけなのだろうか。美術館と、女子高生のダンスの組み合わせは、自分の中にある、遠い遠い昔の記憶を、呼び起こしてくれるような、ロレッタ・ラックスの作品を見た時に感じたものと、どこかつながるような、そんな不思議な感じがした。