NORTH MARINE DRIVE → 45R


meeting → NORTH MARINE DRIVE

高校一年生の時、僕はレストランでアルバイトをしていた。秋の気配が深まってきたある日、そこで働いていた一つ上の先輩が、気になるジャケットを着てきた。かっこいい、というのとも違う。かわいい、というのも少し違う。その中間というのだろうか。とにかく、当時の僕には「何か気になる」雰囲気の服に見えたのだった。

僕は先輩に「かっこいいジャケットですね」と言った。先輩は、まあね、というような表情をした。あまり多くを説明する人ではなかった。「それ、どこで売ってるんですか?」と僕は聞いた。先輩は、お店の名前と場所を教えてくれた。

それは、North marine drive というブランドだった。

North marine drive の「白の長袖Tシャツ」

翌月アルバイト代が出た僕は、教えてもらったショップへ行ってみることにした。予想通り、そこに並んでいた服は高校生のアルバイト代で気軽に手が出せる金額ではなかった。まして先輩が着ていたようなジャケットを買うには、まだまだ労働が必要だった。

その中から、自分にも買えそうなカットソーを一枚見つけることができた(当時はカットソーではなく、長袖Tシャツと呼んでいた。長袖という段階でTシャツではないだろうと、違和感を覚えつつもそう呼んでいた記憶がある)。デザインも雰囲気も良かったし、この一着で今月のアルバイト代が半分以上吹き飛んでしまうけれども、迷わず買うことにした。

数日後、そのカットソーを着てバイトへ行った。先輩は、すぐに僕のカットソーに気がついて、それいいじゃん、と言ってくれた。それだけでもう、このカットソーを買った甲斐があったと思ったものだった。

そして、45Rへ

先日書店で、デザイナーの井上保美さんの本を見つけた。手にとって眺めているうちに、ここに書いたことを思い出した。オフィシャルwebを見てみると、今の僕にも着こなせそうなラインナップが並んでいた。うん、やっぱりいいな、と思った。45Rを着てみたくなった。服が着てみたくて、わくわくするなんて、本当に久しぶりだと思った。

たぶん僕は、45Rの服の先に高校生の頃の自分の姿を見たのだと思う。それはノスタルジックな気分ではなく、あのころ好きだったことを、今でも好きでいられる自分を再認識したのだと思う。


服の選びかた、にも色々ある。流行を追うことも、コンセプトを追求することも、誰かの真似をすることも、それぞれ自由だ。それなら僕は、作り手の思考を覗かせてもらえそうな服を選んでみたい。自分が好ましいと思ったものを、誰に確かめるでもなく評価を求めるのでもなく、少しずつ楽しみながら身につけてみたいと思う。

近いうち「おこづかい」を貯めて、45Rの服を買ってみようかと思う。あの白いカットソーは、もうだいぶ昔になくなってしまったけれど、今度はずっと長く着られる服を、探してみたいと思っている。


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