【江戸川乱歩】君の推理は余りに外面的で、そして物質的ですよ。(D坂の殺人事件より)




君の推理は余りに外面的で、そして物質的ですよ。
D坂の殺人事件 江戸川乱歩より 


今回紹介するのは、江戸川乱歩「D坂の殺人事件」に登場する、明智小五郎の台詞です。私たちは、何かを推理しようとする時には様々な情報を集めていきます。そして集まった情報から「答え」を導き出していきます。

しかし、そのような表面的で物質的な情報だけで推理しても真実にはたどり着けない。得られた情報だけで満足するのではなく、情報の背後に存在する「人間の内面的な心理」について考察していかなければいけない。と、明智小五郎は説明していきます。

これは、私たちにも必要な視点です。現代は、スマホがあれば一瞬で検索することができます。そして膨大な情報量に触れることによって「もう充分に調べた = わかったつもり」になり思考を止め、批評を始めてしまいます。その結果、あらたな悲劇を生み出してしまうことも少なくありません。

大量の情報に触れることは、ある種の安心感と心地よさをもたらしてくれますが、心地よさに酔ってしまい、そこから思考を深めていく過程を省略してしまう危険性があります。情報量で満足せず、より根本的な部分まで考察していく流れを途切らせないようにしたいものです。

明智小五郎の部屋

「D坂の殺人事件」を魅力的にしている要素のひとつが、探偵・明智小五郎のキャラクターにあることは、もはや疑う余地のないところでしょう。私自身、子供の頃にこの作品を読んだ時「明智小五郎いいなあ。こんな風に頭が切れて、飄々と振る舞いながら様々な問題を解決できたらかっこいい!」と、その個性的なキャラクターにすっかり魅了された記憶があります。

そんな明智小五郎は、どのような部屋に住んでいるのでしょうか? この作品内に彼が住んでいる部屋を描写した部分があるので紹介してみましょう。

ところが、何気なく、彼の部屋へ一歩足を踏み込んだ時、私はアッと魂消てしまった。部屋の様子が余りにも異様だったからだ。明智が変り者だということを知らぬではなかったけれど、これは又変り過ぎていた。
 何のことはない、四畳半の座敷が書物で埋まっているのだ。真中の所に少し畳が見える丈けで、あとは本の山だ、四方の壁や襖に沿って、下の方は殆部屋一杯に、上の方程幅が狭くなって、天井の近くまで、四方から書物の土手が迫っているのだ。外の道具などは何もない。一体彼はこの部屋でどうして寝るのだろうと疑われる程だ。

D坂の殺人事件 江戸川乱歩より


寝る場所もないほど、本に囲まれた部屋に住む明智小五郎。
実は、私(佐藤)も学生時代には似たような部屋に住んでいました。ワンルームの狭い部屋を借りていたのですが、部屋の中にある家具はベットとテレビのみ。収納スペースがなかったので、本や雑誌が床一面に散乱していて、友人が遊びにきた時は本を壁の方に押しやって床に座ってもらっていました。

その当時は意識していなかったのですが、もしかすると子供のころに読んだ「明智小五郎の部屋の印象」が強烈に記憶にのこっていて、無意識のうちに似たような部屋に住んでいたのかもしれない。・・・いやいや、ただ単純に貧乏だったので「本棚を買う金があれば、本を買いたい」という心理から、そんな部屋に住んでいたというのが「真実」なのでした。


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