【江戸川乱歩】「世の中に一番安全な隠し方は、隠さないで隠すことだ。(二銭銅貨)」



「世の中に一番安全な隠し方は、隠さないで隠すことだ。(江戸川乱歩 二銭銅貨)」

「脳は一度見たものは、二度見ない」という一文を、どこかで目にしたことがあります。脳は情報処理をスムーズに行うために「一度見たものは、もうすでに把握した = 見る必要がない」と判断する機能があるらしいのです。

つまり「これは認識した!」と判断してしまったものは「もう確認する必要がない」と判断してしまうので、たとえ視界に入っていたとしても違いには気がつかない。すでに脳の中に存在している情報だけで済ませてしまうわけですね。


このような「脳の働き」を悪用すると「隠さないで隠すこと」が可能になるわけです。隠すという行為は、不自然さを伴うことが少なくありません。そこで「こんなところに隠すはずがないだろう」と思い込んでいる場所に堂々と隠すことで、疑われずに隠し通すことができるというわけです。

逆に考えるならば「ずっと探していたもの」ほど、目の前に存在するのかもしれません。「灯台元暗し」ということわざがありますが、あまりにも身近だと気がつきにくく「探し物は、遠く見えにくい場所にある」という思い込みのようなものもあるので、なかなか見つかりにくくなるのですね。

探していたものは「目の前」に存在する

実際に私は、キャッフレーズの制作の時などに「どこが今回のポイントになるのか?」と、企業のみなさんから話を伺いながら探していくのですが、多くの場合それは「目の前」に転がっていることが多いのです。

企業のみなさんにしてみれば、毎日目にしていることなので「普通」に感じてしまうことの中に「お客さん(他者)からすると、魅力的に感じる」ものが眠っているものです。私の仕事は、それを発見し拾い上げることが最初のステップになるわけです。

大切なことは、目の前に隠れている。
しかし、私たちが「それ」に気がつくことは難しい。

このように考え、目の前のことに意識を向けてみると、ずっと探していた答えがそこに隠れていることを見つけられるかもしれません。


追記:今回紹介した「二銭銅貨」は、江戸川乱歩のデビュー作です。デビュー作でありながら、独特の世界観を構築しつつ本格推理小説として完成度の高い作品に仕上げられているところに、江戸川乱歩の才能を感じます。興味をもった方は、ひきつづき「D坂の殺人事件」の記事におすすみください。


【Youtube版 佐藤ゼミ】二銭銅貨(江戸川乱歩)を読む

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