【北海道旅 3日目(4)】洞爺湖と北海道の少し早い夜【レストラン望羊蹄】


ホテルの窓からの「洞爺湖」

 洞爺湖へは18時に到着した。まもなく日没だが、まだ周囲には太陽の光がほんのりと残っていた。気温がどんどん下がってきていて、風が吹くと自然と背中が丸くなる。駐車場に車を止め、荷物を取り出しチェックインすることにする。

 今回の宿泊地は「洞爺観光ホテル」である。昭和の雰囲気を感じる観光ホテルで、どこか懐かしいような気分になる。今までここに多くの人達がやってきたのだろう、そしてそれぞれの時間を過ごしたのだろう、そんな気配を感じる。
 最近では「昭和レトロ」という言葉もあって、若い人たちに人気があるという。彼らが感じる「昭和レトロ」と昭和生まれの私が感じる「昭和レトロ」は、同じようでわりと違うのかもしれない。それでも「昭和レトロ」という言葉を通して共有できるのは、嬉しいような気がする。

 鍵を受け取ってから、エレベータに乗って部屋へ向かう。「洞爺観光ホテル」と印字された長いキーホルダーのついた鍵で扉を開け、部屋の中に進む。その視点の先に、羊蹄山が夕方の太陽の光を浴び、ゆったりと落ち着いていた。

北海道らしい景色を見た、と思った。

 雲一つない、なめらかな空と風で波打つ湖面。その真ん中に、白い雪の残っている羊蹄山の姿がある。窓際に近づいて写真を撮る。空の色が、昼から夜へと切り替わる境界線。静寂なり。北海道らしい景色を見た、と思った。あと30分も遅れていたら、この風景は見られなかっただろう。丘の駅で、大沼だんごをもう1箱食べなくてよかったと思う。

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 若い頃は「ホテルは寝るところ」と考えていて、ギリギリまで外出して夜遅くにチェックインすることが多かった。少しでも多く歩いて回って何かを見ていたかった。しかし今回の「洞爺観光ホテル」のように「部屋からの風景」もセットの場合、夜にチェックインしていては、この景色を見られなかった。これから、このホテルを利用される方は、日没前の時間も楽しんでいただきたい。美しいです。

 夕暮れの洞爺湖と羊蹄山を堪能した後、夕食を食べに行くことにする。今回は素泊まりのプランしか空きがなかったので、夕食は外食になる。北海道旅、初日の経験を生かし、夕食には若干早い時間ではあるが、早めに行動することにする。太陽が落ち、寒くなる事を想定し、持参していたダウンベストを薄手のコートの下に着込んで出発した。

レストラン望羊蹄で、北海道の夜を

 今晩の夕食は「レストラン望羊蹄」にした。当初の予定では別の店を考えていたのだが、Googleマップを見ながら検索していたところ、以前ガイドブックで目にした「レストラン望羊蹄」が、ホテルからすぐ近くにあるとわかったので、こちらに変更したのだった。そして、この選択は正解だった。


 レストラン望羊蹄は、昭和21年(1946年)開業ということだから、78年の歴史がある店だ。道路から店の入口に向かう道は電飾で、ほのかに照らされている。店内はほどよい明るさで、夜に山を歩いていて山小屋にたどり着いた時のような気分を感じる。
 私たちが通されたテーブルは、店の一番奥の壁際の席だった。ちょっと天井の低い、それが、秘密基地にいるような気分になる。どこか楽しい。注文を済ませてから周囲を見ると、背後の壁に王貞治氏のサインが飾られていた。

 それにしても、78年と言葉にするのは簡単だが、どれだけ多くの人がこの店にやってきて、この席に座ったのだろうと思う。様々な背景や目的を持った人達がここに座り、料理を楽しんだのだろう。そして今晩は、私たちがこのテーブルを使わせてもらっている。店内の控えめな照明の下でそんなことを考えていると、旅情が染み込んでいく。
 妻ととりとめのない話をしていると、ほどなくして料理が運ばれてきた。今回はハンバーグセットと、チキンライスを頼んだ。いただきます、とフォークを手に取る。口に運ぶ。ちょうど今日は、このような料理が食べたかった、そんな味だった。

北海道の夜は、少しだけ足早に

 私たちの地元(仙台)に、おいしいビーフカツレツが食べられる店があった。住宅街の中にある、テーブルが3つとカウンター席の小さなレストランだった。旅行客ではなく、近所の人達が通うような、シックで落ち着いたそして静かな活気のある店だったのだが、数年前に閉店してしまった。もう一度行こう、と思っていたのに、その前に閉じてしまった。

 望羊蹄の味と、その店の味には、どこか共通点があるような気がした。味付けが同じ、ということではなく、料理の気配に似ているところがある、ということだ。そして、もし北海道を旅をする機会に恵まれたのなら、またここに来て食べたいと思う。

 今宵は、私たちが最後に入店した客だったようだ。私たちが帰ろうとした時には、店内には私たち以外に1組の客しか残っていなかった。北海道の静かで少し足早な夜が、もうやってきているのだ。

温泉につかり、1日を振り返る

 ホテルに戻り、温泉に入る。私と一緒に入った外国人の親子が、ここはちょっと熱いぞ、そっちがいいんじゃないか、といった雰囲気で湯船を行ったり来たりしている。言葉は理解できないけれども、たぶん、そのようなことを話しているのだと思う。体を洗ってから露天風呂へ向かう。外はやはり寒いな、と思いながら首までつかる。ふーっ、と息が漏れる。この瞬間が、露天風呂の醍醐味である。

 若い頃は、サウナが好きだった。大学生の頃(もうかれこれ30年前の話だ)、にサウナの爽快感に夢中になっていた。友人達と「長く耐えられた方が勝ち」という競争をして、水風呂に入って脱力する。今考えるとだいぶ無茶な利用の仕方をしていたと思う。読者の皆さんは決して真似しないでいただきたい。

 ここ10年前ぐらいから、サウナはいいか、と思うことが増えてきた。最近では、サウナに入る事はあまりない。とくに明確な理由はない。なんとなく利用しなかった。ここホテルにもサウナが設置されていたので、久しぶりに入ってみようかと思い近くまで行ったのだが、入口付近で、まあいいや、となり利用しなかった。

 部屋に戻ってお茶を飲みながら、布団の上に寝転がってガイドブックをめくる。私は旅の夜に、その日巡った場所を資料を見て復習する時間がわりと好きである。そして、あの場所にはこんな歴史があったんだ、などと昼間の情景を思い出しながら時間を過ごす。時には、しまった近くにこんな場所があったのか行けばよかった、ということもあるのだが、それも含めて復習の時間を楽しんでいる。

 妻が風呂から戻ってきて、布団の上に横になった。少し休憩したら寝る前にもう一回行こうかな、と言っていたけれども、結局そのまま眠ってしまった。ここ数日早起きが多かったからなのか、旅も3日目で疲れが溜まっているからなのか。私も復習を終えてから、いつもよりも早く布団に入って眠った。(つづく

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