【太宰治】 (世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?)人間失格より
今回は「太宰治 人間失格」から、一場面を紹介します。 (それは世間が、ゆるさない) (世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?) (そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ) (世間じゃない。あなたでしょう?) (いまに世間から葬られる) (世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう?) 【 人間失格 太宰治より 】 こちらは主人公の大庭葉蔵が友人の堀木に「これ以上は、世間が、ゆるさないからな」と言われたことをきっかけに「世間とはなんだ?」と考察している場面です。大庭は 「世間ではなく、あなた個人が許さないのだ」 と考察していくのですが、この視点は現代を生きる私たちにも必要な視点だと感じます。 私たちは「一般的に」「常識的に」または「あなたのことを思って」などという意見を受けとることがあります。しかしその「一般」「常識」といった言葉が、本当に「一般常識」ではなく 「発言者個人の考え」であることが、少なくないと思う のです。 自分の価値観で切り取ったものを「一般常識」という言葉に置き換えて発言する。そして厄介なことは、発言者本人が「これは一般常識である」と思い込んでいる(または、そうでありたいと考えている)ため「あなたのために」と強烈に押し付けてくることです。 他者の意見に耳を傾けることは重要です。必要不可欠です。 個人的な視点では必ず盲点が生まれ、見落としが生まれてしまう からです。しかし、個人的な価値観を押し付けようとする相手に対しては、私たちも自分を守っていく必要があるでしょう。 (世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?) さて、そのように考えた主人公は、友人に対してどのような反論をしたでしょう? そして、どのように振る舞ったのでしょう? この続きはぜひ「人間失格」を読んでみてください。主人公の振る舞いの中に「人間失格」が時代を越えて読み継がれている理由が表れていると、私は考えています。 太宰治は「人間失格」を脱稿した1ヶ月後の6月13日に、入水自殺します。本作品が文豪・太宰治の死の直前に書かれた作品である、ということを思い浮かべながら読んでみると、あたらしい発見があるかもしれません。 【佐藤ゼミ】太宰治「人間失格」を読む 〰関連 「読書」に関する記事 「太宰治」に関する記事 「6月19日は何の日ですか?」 ☝筆者: 佐藤