【仕事】私が起業した時に考えていたこと「まずは、質より量をこなせ!」
自分には「新しいもの」は作れない。
私が19年前に独立起業を考えた時の話です。以前、どこかに書いたかと思いますけれども、私は自分に「発想力」や「企画力」があるとは考えていませんでしたし、シンプルで定番商品を好む方なので「目新しいものを作り出すことは、難しいだろう」と考えていました。
そこで、自分の強みのようなものを探してみたところ、かろうじて見つかったのが「仕事をこなすスピードが早い」という事だったんですね。会社勤めをしている時も(出来栄えはともかくとして)私が最初に仕事を終えることが多かったからです。おそらく、要領といいますか、優先順位といいますか、効率よく整理していくポイントを見極めるのが得意だったのではないか、と自己分析してみたわけです。
「下手な鉄砲も、数打てばあたる」と、いうことで
自分が一週間かけて考えたアイデアでも、才能のある人なら一日で考えてしまうかもしれない。それならば「質よりも量で勝負しよう」と起業した当時の私は、そう考えました。下手な鉄砲も数打てば当たるといいますが、とにかく量で勝負するんだと。通常の3倍の量をこなしていけば、どれか1つは当たるんじゃないかな、とそんなふうに考えたんですね。なので「人の3倍作業する。質より量」をキャッチフレーズにしました。恥をかくこともあると思うけれど、まずは恐れずにやってみよう。完成し、実践することを最優先として、圧倒的な数をこなしていくことを目標にしたのでした。
「予算がなければ、自分で作れ。そうすれば無料!」
当時、私が一番時間を費やしていたのが「広告制作」でした。どんなに素晴らしい商品を作っても、お客さんがいなければ売ることができません。売ることができなければ、利益を得ることができません。まずは集客です。そのためには「広告」が重要であり、限られた時間を投資していくには最適な作業だと考えたからです。当時(つまり19年前)はインターネット広告はまだ黎明期でしたから(Google広告も、SEOという概念もまだ存在していません)広告といえば、新聞折り込み広告や、雑誌広告、ポスター、などを活用していくことになります。
物件を契約するだけで予算の多くが飛んでしまった私には、広告もすべて手作業で自分で作っていく必要がありました。私は、自宅のMacを使用して、すべての広告や販促物を自分で手作りしていきました。
「予算がなければ、自分で作れ。そうすれば無料だ!」と、いうレストアマインドとでもいうのでしょうか。古い車やバイクを手作業で修理していた時のことを思い出しつつ、できるところは自分でやっていくことにしたのです。
「いったい、いつ寝ているの?」
日常の業務が終わり、自宅へ戻ります。当時は自宅のパソコンしかネットに接続していなかったので、必然的に制作物の仕事は自宅の深夜になります。テレホーダイが始まる23時にネットに接続して、作業開始。朝方まで作業をして、プリンターで出力したものを、コンビニでコピー。それを、ポスティングやDMの発送。お客さんからの反応を見ながら広告を修正し、別バージョンを作成し再配布。そんなことを延々と続けていました。休日はありませんし、年末年始も「みんなが休んでいる時に働けば、一歩先に進める」などと考えてしまうような性格ですから、とりあえず何かを調べ考えコツコツと修正していました。睡眠時間も削り、仕事の合間に床に横になって仮眠するようなこともありました。
しかし、私の周囲には「起業時には、寝袋で会社に泊まり込んで仕事をした」とか「椅子を並べてベットにしたていた」というような人達がいたので、起業時にこの程度の仕事量は当たり前と考えていたのです。
現在ならば、Google 広告を利用すれば、事務所にいながら様々なテストを行いつつ、データを集積することができます。しかし当時は「そんなものない」わけですから、地図を広げてマーカーで色を塗って、ボールペンで書き込んで、ノートに配布した枚数と状況をメモしていました。
手作り感満載のポスターを持って「これ、貼らせていただけませんか?」と、商店街を回ったこともあります。いきなり頼んでも断られるだろうから、商品を買ってから頼んでみたり、雑談をして話しやすい雰囲気を作ってみたり、いろいろ試みていたものです。もちろん断られることも多かったのですが、その中でも「始めたばかり? がんばってね」と声をかけていただけたりすると、不思議と元気になって頑張れたものです。
「それは、コスパが悪すぎる!」
このような作業は、決して効率はよくありません。いわゆる「コスパが悪い」というヤツです。もっと情報を調べて、効率のよい方法を探さないといけない。そう、感じる人が多いでしょう。私も、そう思います。今、同じことをやりなさいと言われたら「それは、効率が悪すぎますね」と反論すると思います。しかし、このような「コスパが悪い作業」を、一定期間経験しておくことも必要なのではないか、と考えている自分も存在します。創業期に現場で「質より量」を感じておくことが、起業家には必要(少なくとも私にとっては)だと思うのです。
どちらかというと私は「考えてから、行動する」タイプの人間です。考えすぎて行動に移せないこともありました。だからこそ「考えながら、行動する」ことを実践する時間が必要だったのだ、と。しかも、会社の資金ではなく、身銭を切って実践するというシビアな体験が重要だったのではないか。今、私はそんな風に考えています。
「簡単に、根を動かしてはいけない」
もちろん、今でこそ「このような作業が必要だった」と感じますが、当時の私は「このままでいいのか?」と自問自答の連続でした。今よりもずっと若かったし、せっかちでしたから、結果の出ない状況にイライラもしていました。ある日、そんな私の状況を見たあるYさんという方から「大きな木に育てたいなら、すぐに移動してはいけない」と諭されたのです。「地面に根を張るまでは時間がかかる。成長する前に植え替えては、腐ってダメになってしまう」そんなことを、教えていただいたのです。
若いころは「こんなに頑張っても結果が出ないのは、おかしい」と、すこしの努力で諦めてしまいます。しかし、長い間成長を続け結果を産み出している人は、必ずどこかで地道な作業を継続しています。自分なりの努力ではなく、ライバルの企業に追いつき追い越すための作業量が必要になります。自分で自覚している数倍の時間と労力が必要なのです。
Yさんは「あなたの努力は、まだまだ浅く結果を求められる段階ではない」そう、ていねいに教えてくださったのだと今になって、思います。そして今、先輩たちに教えていただいたことを、こうやって次の世代のみなさんへ、伝えているというわけなのです。
まずは、質より量
質にこだわることは大切です。それがすべての大前提です。しかし、質を追求するには「ある一定の作業量」が必要です。4年5年と現場での実践を体験した上に、本当の意味での「質」の追求というテーマが載ってきます。
もしも今、あなたが「独立起業」を目指し準備を始めているのならば「まずは質より量」をテーマとして圧倒的な作業量を積み重ねてみてください。完成させることを最優先事項とし
「今自分にできるベストのこと」を使える時間を投資して鍛え上げてみてください。
その先にしか見えない景色があるし、身につかないものがある。起業して19年が過ぎ、今私はそんな風に考えています。