「百年待っていて下さい」夏目漱石【夢十夜】より

夏目漱石「夢十夜」

「百年待っていて下さい」夏目漱石【夢十夜】


今回紹介するのは、夏目漱石の夢十夜【第一夜】です。以下、物語の結末に触れる部分がありますのでご注意ください。よろしいでしょうか? それでは始めていきます。

【第一夜】には男女二人が登場します。女性は亡くなる直前に、男性にこのような約束をします。 

 「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」(夏目漱石 夢十夜より)

女性は男性に、自分が死んだら墓を作って欲しい。そして墓の横に座って待っていて欲しい。100年経ったら会いに来るから、そう約束をして亡くなってしまいます。のこされた男性は、女性に言われた通りに墓を作りその横に座り待ち続けます。太陽が東から昇り西に沈む。何度それを繰り返しても、100年はやってこない。やがて男性は「自分は騙されたのではないだろうか」と思い始めます。

すると女性の墓から、青い茎が伸び、その先に真っ白な百合の花が開きます。その百合に触れた男性は「百年はもう来ていたんだな」(同)とすでに百年が過ぎ、約束の時になっていたことに気がつく。【第一夜】は、このような話です。 

夢か? 幻想か? 物語なのか?

夏目漱石の作品というと、現実的でシリアスな内容だと感じている方が多いのではと思います。しかしこの「夢十夜」という作品は、夢なのか? 幻想なのか? それとも物語なのか? と、とても不可思議な世界が描かれています。

亡くなった女性が100年経ったら会いにくる、と約束をする。男性は墓の横に座って、その時を待ち続ける。百合の花が咲きそれに触れた時、100年はもう来ていたことに気がつく。ロマンティックな話だと感じる方もいらっしゃるでしょうし、なにか背筋がぞくぞくするようなものを、感じる人もいるかもしれません。読み手によって、物語の印象が大きく変化していく作品だと思います。

夏目漱石の「深層心理」を覗き込むように

夢十夜は「夢」という形式を使って描かれた作品です。実際に夏目漱石が見た夢をそのまま書いているのか、それとも「夢物語」という形式を使った創作なのか。その辺は、はっきりとしていません。

ただ「夢」という形式をとることによって、不可思議で現実離れしたような展開でも、違和感なく頭の中に染み込んでくると、私は感じています。作品の中に登場するモチーフや、物語の構成など、そこには夏目漱石の深層心理が表れているのではないか? それとも漱石が仕掛けた「何か」が隠されているのか。「夢十夜」以降の作品にもつながるエッセンスが感じられるモチーフが眠っているように、私は感じます。ぜひ、みなさんも読み解いてみてください。



【佐藤ゼミ】夏目漱石の夢十夜


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