【はじめての北海道旅 1日目(3)】函館山で、夜景をみよう。【100万ドルの夜景】

市電に乗って「函館山」へ

 塩ラーメンを楽しんだあとは、店を出てさきほど歩いてきた道を駅までもどる。これは個人的な感覚なのだが、行きの時よりも帰りの方が「体感時間」が短いように感じられる。おそらく「行き」の時は、見知らぬ場所を歩くことで気を張り、受け取る情報量が多くなっているのだと思う。「帰り」は、ここはさきほど通った道だね、とぼんやり気味で移動できるので時間が短く感じられるのではないか。

 これを私は「小学校の1時間は無限と思えるほど長いが、大人の1時間は一瞬理論」と仮説を立てている。初めて触れる情報が多い方が、体感速度がゆるやかに流れるという仮説だ。もしも学術的に証明されている部分があるならば、ぜひ教えていただきたい。

 五稜郭公園前の駅近くの「丸井今井函館店」に、コナンスタンプが設置されているので、寄ることにする。買い物をせず、スタンプを押して帰るだけなので、店側としては歓迎されない客だと思うのだが、邪魔にならないよう、そそくさと目的を達成させていただいた。
 帰りのエレベーターの中で、高校生と思わしき青年が「何階ですか?」と聞いてくれた。その口調がとても爽やかだったので、函館の高校生は「爽やかな人が多いのだろう」と私の中で印象が強まった。

 スタンプを押し市電に乗り込む。ここから「十字街」まで移動する。函館市電には「函館どつく前」という駅があるのだが、私はこれを「どつく = 殴る」という意味だと勘違いしていた。そもそも、そのような暴力的な名前をつける訳がないのだが、何かしらの歴史的背景があり、そのような名前にしたのではないか? と妄想していた。

 しかし実際は、表記は「どつく」なのだが読み方は「どっく」なのであった。そう、造船所の「ドック」である。もしも私のように「どつく」だと思っていた方は「どっく」であると、ぜひ脳内で修正しておいていただきたい。「あのー、函館どつく前へ行くには?」と地元の方に質問しても、理解して対応していただけると思うが、なるべくなら事前に修正しておきたい。

函館山で、マジックアワーを待つ。

 十字街で市電から降り、そこからは徒歩で移動する。歩きやすい道をゆったりと15分ほどかけて移動する。特に迷うこともなく、ロープウェイの搭乗口には17時30分ころ到着した。夜景を見るには少々早めの時間だが、昼から夜へと変化していく色彩を(マジックアワーというやつだ)を眺めたかったからである。混雑を覚悟していたのだが、幸いにして待ち時間もなく、スムーズに乗ることができた。料金は往復で大人1.800円。3分間の空中移動だ。

 とくに意識していなかったのだが、案内されるままに乗り込むとロープウェイの最後部に陣取ることができた。まだ太陽の光が残る函館の町を一望しながら、ゆっくりと高度があがっていく。夜景ではないが、すでに美しいと思う。さきほどまで、あのあたりを歩いていたのだよな、と考えながら町並みを眺めている。

 上昇していくゴンドラの中に、aikoの歌声と名探偵コナンのアナウンスが流れていく。これも映画とのコラボなのだろう。私たちは、ああコナンだな、と聞いていたけれど、外国人観光客の方にはどのように感じられるのだろう。そんな、どうでもいいことを考えているうちに、みるみる高度が上がり、山麓駅へ到着した。

 山頂付近の空気は、思っていたよりも肌寒かった。ウィンドブレーカーのチャックを閉めて外に出ると、そこには、いろいろな媒体で目にしてきた「函館山からの風景」が広がっていた。砂時計を寝かせたかのような、やわらかなくびれの海岸線。そこを車が行き来しているのが見える。
 まだ山頂展望台には観光客の姿も適度な数で、展望台と山頂広場を行き来しながら、日没の時間を待つ。心配していた天候も良好だ。風が強めなのは気になるが、なんとか乗り切れそうに思う。スマホ手に待っていると、マジックアワーがやってきた。


予想以上の混雑。前の人の頭しか見えない。

 かれこれ十五年ほど前の話になるのだが、当時の私は「一眼レフカメラ」を購入し、重たいそれを抱えながら写真を取りにでかけていた。その時、とくに撮影していたのが「空」と「山」で、マジックアワーのタイミングを見計らって待機することも多々あった。

 撮影した写真をPhotoshopで現像するのだが、目で見た印象のトーンに近づけていく作業が面白くて何枚も何枚も撮った。カメラマンの知人に相談しつつ、モニターのキャリブレーションが云々、プリントするスタジオが云々、とアドバイスをもらったりした。

 しかし、素人の私には表現したいトーンを再現することができず、自宅の床がテストプリントした紙で埋まり、インク代もばかにならない状況が続いた結果「美しい風景は、心の目で刻めばいいのだ」と嘯き、写真はスマホで「記録写真」を撮るようになっていた。
 現在ならば、もしかすると私が作りたかった色彩を、当時よりも手間を省いて安く制作できるのかもしれない。また制作してみたい気もするけれど、いや、またタイミングを見て作品作りをしてみたいと思う。今回の北海道の風景を見ながらそう思う。

 マジックアワーを堪能できたし、朝からずっと歩き通して疲れてきたので、いったん展望台の中に入って風を避けることにする。売店で「函館ガラナ」を買って飲む。元気が出た気がする。しばしの休憩のあと、もう一度外に出ると展望台は、さきほどとは比較にならないほどの観光客で密集状態となっていた。背伸びをしても人の壁でよく見えない。私も妻も、まあまあ背が高い方なのだが(私は178cmで妻は173cm)それでも厳しい状況だ。

 これは厳しい、一度様子を見ようと「屋内ラウンジ」へいくと、そこからも夜景を見ることができることに気がついた。こちらは展望台よりも人が少なく、十分に夜景を眺められる。風を避けられるので、ガラス越しで写真を撮ると自分の姿が反射してしまうが、今はこちらの方がありがたい。しばしここに落ち着くことにする。

そして最後は、粘った人の勝ち?

 函館山からの夜景は「100万ドルの夜景」と呼ばれているのだそう。確かに、美しいくびれの海岸線とそれを縁取る光には、旅情を揺さぶられる。もっと眺めていたくなる。すぐ近くに立っていた係員の方にロープウェイの営業時間を聞くと22時まで、ということだった。
 まだ時間はあるので、妻と雑談をしながら館内を歩き回っていると、日没から40分も過ぎたあたりからロープウェイの搭乗口が混雑し始めた。想像するに、団体の方たちが移動する時間になったのだろう。

 もしかしてこれは? と思い外に出てみると、先ほどとは人の数が半分以下に減っている。夜景もちゃんと見える。函館の夜の空気を感じながら、目の前に広がる光の点滅を眺めた。気分が良かったので、妻と二人で並んで自撮り写真にも挑戦した。普段撮り慣れてないので、顔だけが大きく写ったりピンボケになったりした。2、3回試してみて、まあいいか、と諦めた。それが私たちの、函館夜景写真の思い出である。

 帰りのロープウェイも、最前列に立つことができた。函館の夜景へ向かって3分間の空中散歩。名残惜しさを感じつつ、ここからは「十字街駅」まで行き、市電で函館駅まで戻ることになる。
 出口から左に曲がり道なりに歩いていくと、道幅の広く交差点の向こうまで、まっすぐに続いていく坂道の前に出る。絵になる道だな、と思いながら雰囲気を味わいつつ歩く。あとから調べたところ「二十間坂」という、いわゆる観光名所であった。

 函館は海に囲まれている影響から風が強く吹くため、火災が発生すると広範囲に燃え広がることがあったそう。そこで、道幅を広くとることで「防火帯」として、このような道が整備されたらしい。つまりこの坂も、見た目で設計されたのではなく、目的から設計されたわけである。駅まで徒歩で移動される方は、直進せず二十間坂を通って歩いてみると、よろしいかと思います。


函館の夜は、早かった!?

 さて、それでは函館駅に戻って晩飯を・・・と、思ったのだが、この考えは甘かった。最初に、知人に勧められた駅近くの回転寿司へ行ってみたところ、店の前には順番待ちの人たちであふれていた。私たちの順番と閉店時間を照らし合わせると、時間内に順番が回ってくることは難しそうだった。

 こちらは諦め、駅前に行けば大丈夫だろうと行ってみたが、ちょうどいい店が見当たらない。私たちと同じ観光客と思われるグループが「もう、なんでもいいよ。お腹減った。早く食べよう」と話をしている声が聞こえる。結局、見つからなかったらしく、しばらく後にコンビニへ入っていく姿を見かけた。

 この時の私は、1日歩き回った疲労が蓄積していて食事よりも休みたかった。私たちもコンビニで済まそうか、と話していたのだが、食泊予定のホテルの近くに中華料理店があったので、そこに入ることにした。かなりボリュームのある店で、頼んだのだから残さず食べなければ、とラストスパートの詰め込みをした。

 想像以上に苦しくなり、最後の料理二人でひとつでよかったね、と話をしながらホテルへ向かった。今日は旅行代理店に予約してもらったビジネスホテルなのだが、清潔なベッドがあれば十分。もう寝よう。今日は天気がよかった。明日も晴れますように。スマホに充電ケーブルをセットして眠った。(つづく

人気のある記事

ダイソーで「グロー球(FG-1E)」を購入する。

【ダイソー】腕時計(500円)の電池を交換する【ミリウォッチ】

「ほんとうのさいわいは一体何だろう。」銀河鉄道の夜(宮沢賢治)より

私とハトの七日間決戦 アイテムは100均のみ!