「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」風姿花伝より
「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず(風姿花伝)」
私が初めてこの一文を目にしたのは、高校生の時だったと思います。古文の資料の中にあったと思うのですが、初めてこの一文を見た時は「なるほどそうか」と。秘密は公開してしまうと力が失われていくものなのだ。一子相伝というけれど、やすやすと公開してはいけないのだな、と考えたことを覚えています。
先日、風姿花伝を読み返したところ、この一文のあとに、このような文章が続いていることに気がつきました。
しかれば秘事といふことをあらはせば、させることにてもなきものなり。
(風姿花伝)
「秘事」と聞くと、とんでもなく貴重な秘訣であり期待してしまけれども、実際には「たいしたことない」ものなのである。だからこそ「秘密にしておく」ことそのものに意味があるのだ。そのように解釈できると思います。
成功者しか知らない『秘密』があるのでは?
確かに、これは私自身にも思い当たる体験があります。私は「独立起業」した時、成功している経営者の人に会うたびに「うまくいく秘訣を教えてください」というようなことを質問したものです。この質問の背後に「成功するには、その人たちしか知らない『秘密』があるのではないか」という考えがあったからです。
ところが、私の質問に返ってくる言葉は「真面目にやること」というような「普通のこと」ばかりだったのですね。まさに「させることにてもなきものなり。」という感じです。当時に私は、そのような返事を耳にする度に「たしかに、真面目が大切なことはわかる、でも本当の秘密は別にあるに違いないし、簡単に教えてはもらえないのだろう」と感じていたものです。
しかし、実際のところ「真面目にやること」こそが「秘訣」であり本質なのです。経営者のみなさんは「秘訣を隠していた」わけではないのです。なので「たいしたことないな」と思われるくらいならば、秘密にしておいた方がいい。そして、本当に理解できる人や、ここぞというタイミングに伝えた方がいい。まさに、風姿花伝に書かれていたことを、実感したのでした。
そじて実際に、これから私が起業する若手のみなさんに質問されたとしても「真面目にやること」などと、説明することでしょう。そして、なんとなく腑に落ちないような表情を見ながら「これが真実なのだよ」と、心の中でつぶやくと思います。
「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず(風姿花伝)」
しかれば秘事といふことをあらはせば、させることにてもなきものなり。(同)
今回、風姿花伝を読み返すことによって、私なりに考えたことを書いてみました。「人生を通して何かを身に付けたい」と志している方は、ぜひ読んでみてください。
【コサエルラジオ】「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」風姿花伝より