【北海道旅 2日目(2)】函館本町エリアを歩く【工芸と天然酵母のパン】


函館は、坂と異国情緒あふれる街

「函館」というと「異国情緒あふれる街」という印象があった。日米和親条約(中学生の時に日本史の授業で習ったやつだ)で下田と函館が開港となり、いち早く外国の文化に触れた街。外国人が生活し、教会が建てられ、歴史的建造物が多く残された街。そのような情報から、函館には異国情緒あふれる街並みのある街、という印象を持っていたのだった。

 2日目は、そのような歴史的建築物が集まっている「本町エリア」を散策するのが、目的である。いわば、定番の観光スポットをめぐる予定なのだった。
 函館市電の「十文字街」で降車し、まず最初に向かったのが、「はこだて工芸舎」である。私は、10年ほど前から「民藝」に惹かれるようになってきた。もともと妻が民藝に興味を持っていて、一緒に盛岡や仙台の光原社などへ行っているうちに興味を持つようになった。昨年は「日本民藝館」へも行った。

 もちろん、私たちが購入できるものだから高価な物ではないし、多くを求めることもできない。あくまでも日常の品として使うものなので、いわゆる骨董的価値があるものではないのだが、それでも自分たちの好みで探したものを使って生活するのは、なかなか楽しいものだ。そのようなわけで、今回、函館に行こうと決めた時、はこだて工芸舎へ行ってみたいと思っていたのだった。

市電に乗って、はこだて工芸舎へ

 はこだて工芸舎は、明治23年の建物をリノベーションして利用しているお店である。つまり建物そのものが歴史的建造物なのである。入口をくぐると歴史の流れを感じる重厚感のある気配に包まれる。窓から差し込んでくる静かな光。ちょっと薄暗い店内には、もうずっと100年以上も昔から、そこにあったかのような工芸品が静かに並んでいる。

 学生の頃、通っていた仙台の古書店にも、このような気配のある店があった。自分の背よりも高い本棚が並ぶ狭い隙間をすり抜けていきながら、奥のほうに進んでいくと「この先に自分が探している何かが眠っているのかもしれない」と気分が高揚していく感覚。

 ここ数年、仙台の街では、そのような店が次々と閉店してしまった。先日も、仙台の老舗書店が閉店してしまった。建物の老朽化、維持管理などなど、様々な要因があるのだろうけれど、それらが思い出の中だけにしか残らないのは、やはり寂しい。もっと繰り返し足を運べばよかった、とすべてが過ぎ去ってからそう思う。

 それにしても風が強い。窓に風が当たってバタバタと音を立てている。昨日の函館山も風が強かったけれど、今日はそれと同じくらい風が強く感じる。やはり函館は風が強い地域なのだろうか。風音を耳にしながら、店内を回っていく。1階を見終わった後、2階に展示室があるということなので、見せていただくことにした。

 そこだけ時間の流れがゆるやかになったような部屋で、ひとつひとつ足を止めて展示物に見入っていると、予定よりも時間が過ぎてしまっていた。旅人である私たちには、時間の制限がある。そろそろ行こう、と妻に声をかけて1階に降りる。
 小さなものをいくつか購入させていただいてから、店員さんに、写真を撮ってもいいですか、と伺うと「どうぞ撮って下さい。インスタにもあげてください」と返事が戻ってきた。インスタにはまだあげていないが、その時の写真の1枚をここに掲載させていただく。 

https://satotaka.reword21.com/2024/05/hokkaido2-2.html

 ちなみに「はこだて工芸舎」は映画のロケ地にもなっているのだそう。まだ未確認なのだが、いつか映画を観てみようと思う。そして今日の記憶と照らし合わせてみようと思う。

 店を出た段階で午前11時を少し過ぎたところだった。少し時間は早いが、この近くにあるラッキーピエロへ行って少し早い昼食を済ませることにした。実は昨晩、別のラッキーピエロの店舗へ行ったのだが、長蛇の列ができていたので断念した。
 
 昼飯よりも少し早めの時間に行ってみれば、スムーズなのではないかと考えたのだ。ところがところが、人気店を甘くみてはいけなかった。店内には順番待ちの列ができていた。これは難しいかもしれない、とりあえず水分をとって、先に本町エリアを歩いてみることにした。早めではなく、遅めの昼食にする予定である。

坂をあがって、天然酵母のパンを買おう

 次に向かったのは「天然酵母パン tombolo」さんである。石畳の開放感のある「大三坂」をまっすぐに歩いていく。高い建物がないので、空が広い。青い空に向かって足を進めているような気分になる。爽快なり。

 大学生の頃、最初に借りた部屋が、駅から続く坂道を登った高台にあった。特に何も考えずにその部屋を借りたのだが、出かける時は降り坂なので楽だけれども、帰宅時は急勾配で疲れるし、雨の日は上から水が勢いよく流れてきて靴が濡れてしまう。

 坂の街に住む、とは言葉の響きはいいけれど、実際にはなかなか大変だ、あまり住みたいとは思わないな、と感じていた。実際に次に借りる道は平坦な場所にしようと思い、それを条件のひとつにしたくらいだった。

https://satotaka.reword21.com/


 函館の坂も勾配はあるし、自転車などで上り下りするのは大変だと思う。車がないと、重い荷物を持って移動するのも大変かと思う。それでもどこか、このような雰囲気の街ならば、住んでみたいなと思える気配があった。この坂道のように、その先に海が見えたならば最高だろうと思う。
 
 できれば近代的な街よりも、函館のように歴史的な情緒が残る街に住んでみたい。築数十年の年季の入った物件を借り、自分でこつこつ修繕したりリノベーションしたり(私たち夫婦は、わりと手先が器用なの方である)住んでみるのも良さそうだと思う。いつの日か、そんな場所に住んでみようかと思う。言葉にすると具体化するかもしれないので、その時に向けてここに記してみた。

 そうやって春の陽射しを感じながら、坂を歩いていくとtomboloさんがあった。引き戸を開けて店内に入る。天然酵母のパン屋さんの店内には、密度の濃い独特の空気感がある。ああ、ここのパン屋さんは美味しそうだな、と期待値が高まっていく。
 妻が並んでいたパンの中から、気になったものを選んでいる。今回この後、あるものと一緒にこのパンを食べるつもりである。その時にまたtomboloさんのパンが登場するので、詳細は後ほど。(つづく

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