【北海道旅 3日目(2)】大沼だんごと、チーズとパンと。
函館から北上し、大沼国定公園をめざす
トラピスチヌ修道院を出て、次に目指すのは大沼国定公園である。いまのところ「地方の幹線道路」といった風景が続き、まだ「北海道を走っている」といった雰囲気ではないが、信号機が少なく道もまっすぐなところが多いので、移動は楽だ。レンタカーにも慣れてきて、淡々と走ることができる。 途中「ラッキーピエロ 峠下総本店」の横を通過したのだが、店の前まで人が並んでいる姿が見えた。ラッキーピエロはどこの店舗も混んでるのだな、と思う。昨日はマリーナ店の眺めの良い席でハンバーガーを食べられてよかったと思う。「大沼公園」という道路標識を確認し右折。道道338号へ入ると、左手に「大沼(小沼)」が見えてくる。
私は釣りが好きだ。小学生の頃に「釣りキチ三平」を読んだのがきっかけで興味を持ち、友達に連れて行ってもらってからすっかり夢中になってしまった。中学高校の頃は、音楽やバイクに夢中になったので、釣りをしない時期があったのだが、大学生になってから友人達と釣りをするようになった。「釣り合宿」と称して河口湖へ行ったのもいい思い出だ。
卒業して社会人になってからは、小型船舶免許を取るほどになった。淡水専門だったので、湖を見るたびに気分が高揚する。釣りができる場所なら、5分でも10分でも竿を出したくなる。
大沼公園で、大沼だんごを買う
空の青に染まる湖面に沿った、緩やかな道を進んでいくとほどなくして大沼公園駅に到着した。駐車場に車を止め、真っ先に向かったのが「元祖大沼だんご沼の家」である。今回、大沼公園にやってきたのは、風景を楽しむこともあるが、大沼団子を食べることが目的なのであった。まだ売り切れてないよな、と話しながら店へ急ぐ。 店内には数名ほど並んではいたが、無事に購入することができた。大沼団子は「醤油、ゴマ、餡の3種類」なのだが「醤油+ゴマ」「醤油+餡」の組み合わせで販売されているので、どちらも食べたかった私たちは、2箱購入した。とりあえず無事に購入できたので、ひとまず車に置いておき、改めて大沼の観光に出かけることにする。
駅前の大沼国際交流プラザへ行き、観光パンフレットをもらう。散策路は4コース設定されており、どれにすれば良いのか迷ったので受付の方に相談してみると「大島の路のここから、駒ヶ岳がよく見えますよ」とスポットを教えていただいた。大島の路は、15分程度で一周できるということなので、まずはここ歩いてから考えることにした。
大沼は、大正天皇が皇太子時代に行啓された場所なので、その当時から景勝地だったことがわかる。日射しは春にしてはやや強めに感じるけれども、空気が涼しいので散歩して歩くにはちょうどいい時期だ。
公園広場には、たくさんのレンタル自転車が並べられていた。まだ少し早い今の時期は、自転車で移動する人の姿は、あまり目につかない。まもなくゴールデンウィークだから、その時はこの道もレンタル自転車で移動する人で賑わうのだろうか。
散策路を、ぐるりと歩く。
公園広場へは、大沼公園駅から歩いて5分ほどで到着した。公園広場に到着してすぐ、目の前に北海道駒ヶ岳の見事な風景が飛び込んできた。今日は雲もなく空気が澄んでいるので、山の姿がはっきりとよく見える。この位置から見ると、左側の一部が鋭角に尖っているのが印象的な山容である。今「この位置から」と書いたことを、覚えておいていただきたい。その理由は後ほど説明させていただく。
散策路はよく整備されていて、とても歩きやすい。橋を渡り、教えていただいたビュースポットで撮影をし、ぐるりと散策路を一蹴する。パンフレットには約15分と書いてあったが、時折立ち止まりながら、ゆっくり歩いても20分もかからなかったと思う。歩きやすい散策路だった。思っていたよりも早く一周してしまったので「島巡りの路(50分)」まで足を伸ばし、行けるところまで行って、途中で帰ってくることにした。
島巡りの路を歩いていると、さきほど出発して行った遊覧船が、向こう側から戻ってくるのが見えた。その引き波に煽られて、手漕ぎボートの人たちが、波が来たよ! と話している声が聞こえる。足こぎの白鳥ボートも揺れている。
子供の頃、あの足こぎボートに乗るのが夢だった。うちの両親は観光地に来ても、ボートなどには乗せてくれなかったので、大人になったら乗ろうと思っていた。ところが大人になってみると、そこまで乗りたいという気分ではなくなってしまっている。欲しい時には手に入らないが、手に入るようになった時には欲しくなくなってしまう。なんというか不思議なものですよね。
島巡りの路は名前の通り、橋を渡って小島を移動していくコースである。橋を渡り、湖面を眺め、アイヌ島までたどり着いた。ここで立ち止まり、持ってきたペットボトルのお茶を飲んんだところで、そろそろ時間だから帰ろうかと、今来た時間を逆戻りして元に戻った。
チーズを買って、パンを食べよう
この時点で午後の1時を回っていた。しかし昼食の前に「山田農場チーズ工房」で、チーズを買いたいと思っていた。そう、この記事をずっと読んでいただいた方には、ピンときた人もいらっしゃるかもしれないが(よろしければ2日目の記事を読んでみていただきたい)「山田農場チーズ工房」さんでチーズを買い、tomboloさんの天然酵母パンにつけて食べよう、というのが妻が考えた計画であった。そう、2日がかりの昼飯である。北海道は、冬季は閉鎖になっている道があるので、山田農場チーズ工房さんへの道が大丈夫かどうかが少々不安だった。レンタカーを借りるときに、大沼公園周辺の道路状況を質問したところ、あーそうですね、あの辺りはたぶん大丈夫だと思いますよ、との返事だったので、道路状況と営業しているかを確認させていただくために電話をかけみた。すると、営業しているとのことだったので、よかったパンが無駄にならなかったと思う。
山田農場チーズ工房さんは、ナビによると大沼国定公園から10分ほどと表示された。意外に近いようだ。しかし山道を通るだろうから、もう少し時間かかるではないかと思いつつ出発したのだが、特に走りにくい道もなくスイスイと到着することができた。駐車場に車を止め、お店まで歩く。緩やかな丘になった先に手描きの看板が見えた。
今日はこちらです、とお店の方がチーズを見せてくれる。説明をしていただきながら、さあどうしようかねと迷ったのだが、丸々とそしてお店に置いてあった蜂蜜を買った。お店の方に、どちらから? と聞かれたので仙台からと答える。
すると、仙台の〇〇という飲食店と取引がある、と言う。ああ、私たちもそこには何度か行ったことがありますと話をする。私もいつか仙台に行ってみたいと思ってます、とのこと。函館工芸社の店員さんには、仙台ですか? 近いですねと言われたけれども、チーズ工房の店員さんには少し遠い場所に感じるのかもしれない。ぜひ近い将来、仙台にいらして欲しいと思う。
私たちにとって「最高に贅沢」な食事
店を出てナビを確認すると、峠の方へ走った先に「城岱牧場展望台」があると表示が出た。せっかくだからそこへ足を伸ばして、そこでパンを食べようと車を走らせた。ところが、である。そう予想通り、少し走ったところで「この先冬季通行止め」の看板があり、展望台まで抜けることができなかった。この時期(4月)は、まだ冬季通行止めの道があるので、車で移動される方は注意していただきたい。 通行止めでは仕方がないので、今来た道を引き返すことにする。しばらく走ったところで、大きく開けたスペースがあり車が停められる場所があったので、ここで休憩させてもらってパンを食べようということになった。
キャンプ気分というか、登山中に食事をするような感じでパンを用意し、先ほど手に入れたバターを塗り、そこにハチミツを垂らす。贅沢、という言葉には様々な解釈があると思うけれども、私はこのような瞬間を贅沢だと感じる。そこで丁寧に作られた食材を手に入れ、そこで工夫して食べる。これを贅沢と言わずして何と表現するだろうか。というよりも、この組み合わせがおいしすぎた。おいしいねー、贅沢だねーと、妻もニコニコしている。
駒ヶ岳を眺め、パンをひと切れ食べて、北海道の大地と昼食を堪能した。ようやく私が考えていた、北海道らしい食事ができた、と思った。まずはお互いにパンをひときれ食べ、残りはホテルに帰ってから食べよう、として次の目的地に向かって車を走らせた。(つづく)