【北海道旅 4日目(4)】ニセコで温泉。【ホテル甘露の森】
ホテル甘露の森へ宿泊
有島記念館を後にし周辺を車で散策したあと、本日の宿である「ホテル甘露の森」へ向かう。今回なぜこのホテルを選んだかというと、北海道旅行を検討している時、偶然手にした書籍の中に「一生に一度は出かけたい温泉宿」と紹介されていたからである。 基本的に私たちが宿を決めるときは、場所と値段で決めてしまうことが多い。バリ島へ行った時は「ヴィラに泊まりたい」という目的があったので情報収集をしてから決めたのだが、それ以外は「なんとなく」で決めることも多い。宿にいる時間よりも外に出歩いている時間の方が長いので「清潔な場所であればいい」と考えてしまう。
そして何よりも、ガイドブックに紹介されている宿は高額なことが多いため予算に合わないことが少なくない(←これが最大の理由!?)。しかし予約サイトで「ホテル甘露の森」宿泊料を調べてみたところ、オフシーズンためか、予算内で収まる部屋があった。それならばここでいいよね、なにしろ「一生に一度は出かけたい温泉宿」なのだから、と予約することにしたのだった。
旅のトラブルは、時が過ぎればいい思い出
旅は、トラブルがつきものである。知らない場所へ行くのだから、予定外の出来事が起きるのは当然ともいえる。旅先のできごとは必然。むしろ時が過ぎれば、いい思い出になることも少なくない。心身にダメージが残るトラブルは全力で回避したいが、ある程度は「そういうものだ」と考えたほうがいいのだと思う。
今回はチェックインをして入室した部屋で、ちょっとしたトラブルに遭遇した。部屋に入ったところ、ザーとホワイトノイズのような音がする。最初は、気のせいかと思っていたのだが、どこか不自然な感じがしたので調べてみると、トイレの水回りに不具合があって水が流れ続けていたのだった。
フロントに電話して確認したところ、そのまま荷物を持って部屋でお待ちくださいと連絡があった。修理を担当する方が来て、しばし作業してもらったが改善せず「別の部屋へ移動」となった。案内された別の部屋に入る。同じ間取りの同じスタイルの部屋。部屋から見える風景も同じなので、移動した感じがしない。既視感が違和感。同じであるのが当然なのだが、なんとなく不可思議な感じがするのはなぜだろう。
繰り返しになるが、旅は、トラブルがつきもの。そして今まで経験してきた旅先のトラブルと比較するならば、この程度のことは「仕方ないね」の範疇だ。そして、個人的な経験を語らせていただくならば、トラブルの後には良いことが起こることが多い。気がする。いや、そんな気がしている。しかし、そう、さらなるトラブルが……、ということもなく、ここからは順調に回復していくので安心していただきたい。
新しい部屋に旅装をといた私たちは、では温泉に行こうか、となった。風呂は、開放感がありモダンで上品な雰囲気のある内装だった。露天風呂に入っていると、外国人の親子が湯船に入ってきた。お子さんがまだ小さくて、湯船から出て周囲を歩き回る。そして、もう上がろうよみたいなことを言う。すると父親がママが入ってるからもう少しと諭すが、ぽちゃんと湯船につかると、もう出ようを繰り返す。
そんな様子を見ていると、自分の子供のころを思い出す。自分も子供のころは温泉のありがたさがわからなかった。すぐに上がろうとして、なんだもう上がるのかもう少し待て、と祖父に言われたことを思い出す。祖父と温泉に行ったのは、あれが最初で最後だったと思う。もっとゆっくりしてあげればよかった。今ならむしろ、先にあがるぞ、といわれるまで入っていると思う。
一人で温泉にはいると、思い出すこと
2人が上がってしまってから、誰もいなくなった湯船に足を伸ばし北海道の空を見る。私はこうやって露天風呂に1人で入っていると、今までに行った温泉のことが頭に浮かんでくる。今回は、乳頭温泉で出会ったリス(?)のことを思い出した。湯船につかっているとすぐ近くで、何かが動いたような気配があった。気のせいかな、と思った。次に動いたときには、ネズミかもしれない、と思った。そんなことを考えながら壁の隙間を見ていると、ぴょこっと顔を出し横を駆け抜けると、すぐに物陰に隠れてしまった。
あの時も1人だった。いや違う、また出てこないかな、と待っていたところ、後から入ってきた男性に話しかけられたのだった。その人は、とてもよく通る声をしていた。数分間ほど雑談をした。なぜかその声が、今でも頭の中に残っているような気がする。よりによってそんな出来事が頭に残っている。
今まで、どのくらいの温泉に行ったのだろう。そして、もう二度と足を運ぶ事のない場所が大半だろう。そう考えると妙に寂しい気がする。これが年齢を重ねるということなのかもしれない。この時間をしっかりと頭の中に刻んでおこうと思う。
もっと、たくさん食べられたのなら、と思う。
風呂から上がると、食事の予約の時間になった。「ホテル甘露の森」の夕食は「和洋折衷ハーフビュッフェ料理」となっている。簡単に説明すると、メイン料理に加えて、好きな料理を「ビュッフェ」形式で追加できるシステムとなっている。
実は「和洋折衷ハーフビュッフェ料理」であることを、知らなかった。事前に確認していなかった。ところが、メインもビュッフェも美味しく、そして豊富なメニューだったので「あれもこれも食べてみたい」と気分が盛り上がった。
私たちは二人とも、あまり食事の量が多い方ではない。わりとすぐにお腹がいっぱいになる。お酒も飲まない。食べ放題のプランはおおかた損をするので、ほとんど行かない。しかしビュッフェ形式だと少しずつ楽しめるので、とても楽しい。お互いに料理を持ってきて「それ、どこにあるの?」「これ、美味しいから食べてみてよ」と行ったりきたりしながら、食事の時間を楽しんだ。
とりわけデザートのケーキを作れるのが面白かった。小さなスポンジケーキにトッピングして、それっぽく一皿を作った。なぜかふと、夏休みの自由研究をしている気分になった。なぜかはわからない。
ちなみに朝食も「和洋バイキング」なのだが、夕食の段階で「これは朝食にも並びそうだろうから、その時に食べよう」と思っていた料理が並んでいなかった。なので、気になる料理は食べておいた方がよろしいかと思います。食べ物の後悔って、別にそこまで大袈裟なことではないのに、わりと後悔しますよね。もちろん「和洋バイキング」も、夕食時同様、充実した内容だったので、十分に楽しめたことは強調しておきます。
音楽と共に、最後の夜は更けていく
夕食を終えてロビーの方へ向かうと、楽器の音色が聞こえてきた。「森の音楽会」ということで、地元の演奏家の生演奏を聴くことができるのである。通常の1.5倍の食事をお腹にとりこんだ、ぼんやりとした頭で音楽を聴いていると、遠くにやってきたような、それでいてすぐ近所にいるような、時間と空間が曖昧な感覚になってくる。ふと、ああここは北海道なのだ、と思う。そして、明日には帰らなければいけないのだな、と思う。
演奏が終わり、最後まで残っていたのが私たち夫婦だったので、帰り際に挨拶をさせてもらった。そして話の流れで、一緒に記念写真を撮らせていただいた。写真を見る度に、今日のこの時間を思い出すことだろう。(最終日につづく)