遠野をめぐる旅 その4(完結)

遠野ふるさと村を出た時点で、時刻は午後3時を少し回ったところだった。閉館までの残りは「あと2時間」。長くはないが短いわけでもない。さて、どうしようか。できれば最後に遠野市立博物館へは立ち寄りたい。しかし移動の時間などを考えるとギリギリか・・・などと考えている時間さえもったいないので次の施設へ移動することにする。手間や面倒を惜しまずに「とりあえず行ってみる」ことが、旅先では大切なことのひとつなのだ。たぶん。

そんなわけで、次に向かったのは「伝承園」。
入口で入場券を求めた際に、受付の人が後ろを指差し「よろしければ、ご利用ください」とひとこと。おおっ。さきほど、かっぱ淵で見かけた観光客がかぶっていた不思議な麦わら帽子(頭の上にカッパのお皿がついている。写真を撮るのを忘れました)はこれだったのか。この伝承園で貸し出してくれるカッパコスプレ帽子(正式名称は「河童の皿」らしい)をかぶれば、強い日射しの下でも遠野の町をカッパ気分で歩けるというわけだ。いや待て。カッパは皿の水が乾いたら死んでしまうのではなかったか? するとこの帽子は雨の日に使用する方が適切なのか、とどうでもいいことを一瞬で考える。そして無駄に脳内のエネルギーを消費する。このような無駄な思考を、まっとうなことに集中させることができたのなら、もしかしたら何か世の中の役に立てることのひとつも思いつくかもしれない。そして・・・まあいいや。本題にもどる。

ここ伝承園での見所のひとつは「御蚕神堂」だ。このお堂には「オシラサマ」が千体展示されているという。案内板を見ながら、曲がり屋の薄暗く細い建物の廊下を歩き、右に折れ、おそるおそる覗き込んだ部屋の壁一面に、たくさんの人達が願いをかけた「オシラサマ」の姿があった。ここにこうやって立っていると、人の祈りが集結すると独特の気配が生まれてくるのだ、ということを実感する。誰もいないのに、誰かがいるような感じがする。軽口を叩くことは許されないような、神妙な祈りの念が色濃く詰まっている空間。その力に上から押さえつけられているような感覚がして、部屋の中が実際よりも狭いようにも感じられる。もしも入口付近に「座敷わらし」が立っていたとしても「ああ、座敷わらしか・・・」と普通に受け入れてしまうような雰囲気の場所でした。そんな余韻を残しながら施設の外へ出る。ここで残り時間は1時間を切ったところ。まだ間に合うぞ。さあ締めくくりの遠野市立博物館へ向かおう。ゆっくり急げ。

遠野市立博物館へは閉館の30分前に到着した。受付で入場券を求めると「閉館まで30分ほどしかありませんが・・・」と申し訳なさそうに言われてしまったが、いやいやそれは十分承知の上。むしろ閉館ギリギリにお邪魔してしまってすみません、と口にはしなかったけれど心の中で言ってから、いそいそと展示物を見て回る。

遠野市立博物館は、平成22年に「遠野物語発刊100周年および開館30周年」として全面リニューアルが行われたのだそう。実際に回ってみると、映像や資料の見せ方などが面白く工夫されていて興味がそそられる空間になっていた。地元の仙台市博物館の雰囲気も好きだけど、遠野市立博物館の空間の使い方もいい感じだ。さらに特別展として「佐々木喜善と宮沢賢治」の展示コーナーもあり、宮沢賢治の直筆原稿や手紙などを見る事ができたのは大きな収穫だった。賢治の「あの筆跡」をじっくりと見ながら展示資料を堪能したいところだったけれど、残念なことに時間がない。ときおり腕時計を覗き込みながら、先へ先へと進む。館内をぐるりと回って、さいごにマルチスクリーンシアターで「水木しげるの遠野物語」を観て、ちょうど閉館の時間。かなり時間はギリギリだったけれど、最後に博物館に足を運んでよかった。やはり旅に博物館は外せないな、と帰りのルートを確認しながら、しばし満足感を噛みしめる。そして、これで今回の遠野をめぐる旅はすべて終了だ。

さて、すでに気がついていらっしゃる方もいると思うけれど、最後の数時間はほとんど写真を撮影することができなかった。いや実際には「写真を撮るくらいの時間」はあったけれど、撮りそびれてしまったのだ。いかに最後の数時間が「ラッシュ状態」だったかを想像していただけるかと思う。外から見たならば、べつにあせってはいないように見えたかもしれないが、いつも通りの感じに見えたかもしれないが、残り時間を把握して場所を確認して車を運転して飲み物を飲んだりもして、わりと気忙しかったのである。そんなことを最後にわざわざ書く必要もないとは思ったけれど、なんとなく書きたくなったので記してみた。とにもかくにも濃厚で充実した時間を過ごせた一泊二日の遠野旅でした。(完)

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