種山高原でキャンプ 遠野をめぐる旅(1)
遠野をめぐる旅へ 出発の日
現在自分は宮城県仙台市に住んでいる。そして今回の目的地である遠野市は、お隣の岩手県にある。そう「お隣の県」なのである。仙台から遠野までは高速道路を使って片道約2時間30分。高速を使わなくても3時間ちょっとで行ける距離。少し無理をすれば日帰りでも帰ってくることができる距離なのだけど、この「ちょっと頑張れば行ける距離」というのが逆に踏ん切りがつかないものである。高校生の時に遠野物語を読んでから「いつか絶対に行く」と決めてはや幾年。ようやく今回遠野へ出発することになった。
星座の森でキャンプ
さて、今回の遠野をめぐる旅の日程は、9月の連休を利用した一泊二日。一日目は遠野の近くにある「種山高原」周辺を散策して、そこにある「星座の森」でキャンプ。二日目は朝一番で遠野に向かうという内容だ。なぜ「種山高原」でキャンプをするかというと「種山ヶ原は宮澤賢治作品のモチーフになった場所だからだよ」というのは表向きの理由で、ほんとうのところは、旅の日程を決めたのが10日ほど前だったのでめぼしい宿がほとんど埋まっていて、やけくそ(?)で遠野周辺のキャンプ場を探し偶然に見つけたのが、ここだったというのが真実である。
見つけてから改めて調べてみると、遠野までは車で40分程度のところだから地理的にもちょうどよい。そしてなによりもフリーサイトは「一人200円」という格安設定が魅力的だった。いや、実はこれが最大の決めてといえば決めてだったということは内緒である。なにせガソリン代と高速代だけで1万円札がひらひらっと吹っ飛んでいくので、燃費の悪いオンボロ車で旅をするには「節約できるところは、節約!」が大切なのだ。いちばん費用がかかる宿泊費が「一人200円」だなんて素晴らしいじゃないか。なにせ5人で泊まっても1000円なのだ。10人でも2000円だ。まあ、そんな台所事情はともかくとして最初に向かうのは「種山高原」。トランクにキャンプ用具を詰め込んだら出発だ。
なかにはテントの回りにロープを張り、ずらりと洗濯物を干している「いったいここに何泊しているんだ?」というようなテントもあった。実に平和である。耳を澄ますとあちらこちらから、ちびっ子達の歓声が聞こえてくる。追いかけっこをしたり、ボールを投げ合っている姿も。水場もトイレも清潔に保たれているし、子供を連れてキャンプをするにはよいサイトだと思いました。それになにより「一人200円」だしね(笑)
物見山山頂(870m)へ登ろう
テントの設置が終わったら、ザックを背負って物見山山頂(870m)を目指す。と、書くとなんとなく本格的な登山の雰囲気がでるけれど、実際は整備された道を30分ほど秋の虫の声を聞きながらゆっくりと歩いていくと、あっさり(?)頂上へ到着することができた。物見山は低山の部類の標高だと思うけれど、頂上付近からは周辺の山々峰々を一望することができるので、とても気分がよい。こんなに手軽に頂上へ到達できるのに、眺めはすばらしいという「二度うれしい」登山だったので時間に余裕がある方はぜひ登ってみていただきたい。
山頂では、キャンプ場で汲んできた水を沸かしてコーヒーを飲んだ。ここで飲んだコーヒーは、いつもの山コーヒーよりも美味しさが増しているような気がした。それがなぜなのかはわからない。この風景を宮澤賢治も眺めたのだろう、と少し感傷的な気分だったからかもしれない。キャンプ場の水が美味しかったのかもしれない。来る途中のスーパーで買ったコーヒー豆が自分の好みにあっていたからかもしれない。
もう少しのんびりとして、できればもう一杯ほど飲みたかったのだけれど、秋の高原の太陽は落ちるのが早く、午後4時を過ぎたあたりにはすでに冷たい夜の気配が近くにまで漂い始めていた。雲が濃くなっていく。昼間は強い日射しに照らされて「まだ夏なのではないか?」と思うくらいだったけれど、季節は確実に秋になっているのだ。この調子だと夜から朝にかけて、かなり冷え込むかもしれない。そんなことを考えながら、今歩いてきた道を戻っていく。
「山の空気は鮮烈だ」
残念ながら、夕方に出始めた雲のせいで、楽しみにしていた星空は見ることができなかったけれど、その分、早朝の空気と光の澄み具合には何回もカメラのシャッターを押してしまいたくなるような鮮烈さがあった。「山の空気はおいしい」だけではなく「山の空気は鮮烈だ」ということを再確認することができた。この空気の透明さを堪能できただけでも、ここにテントを張ってよかった、としみじみ思ったものでした。次回は晴天の空で、天の川を眺めたい。そう思いながらテントを撤収して次の目的地「遠野」へと向かうことにする(遠野をめぐる旅 その2へつづく)
もくじ 遠野をめぐる旅
遠野をめぐる旅(1) 種山高原でキャンプ遠野をめぐる旅(2) 千葉家曲がり家から続石へ
遠野をめぐる旅(3) ジンギスカンを食べたらカッパを探しにいこう
遠野をめぐる旅(完結) 遠野ふるさと村から伝承園、遠野市立博物館へ