2013年10月4日金曜日

遠野物語をめぐる旅(2)

今回の遠野めぐりは、市内観光共通券(1.050円)を購入して、市内の施設を回ってみることにした。漠然と「遠野を回る」と言ってもイメージがつかめないので、共通券が使える施設を回りつつ、その周辺の観光地にも立ち寄ってみようというわけだ。

そんな訳でまず最初に向かったのが「千葉家曲がり家」。遠野市のwebによると「曲り家の最盛期に建てられ保存状態も良く、上層農民の最高級の曲り家として典型的なものといわれます。「日本十大民家」の一つに数えられます。」とある。「日本十大民家」ときたならば古民家好きの自分にとって、まず最初に押さえておきたい場所だ。

千葉家曲がり家
駐車場に到着して見上げた丘の上に、悠然と構えた千葉家の姿が目に飛び込んでくる。すでにこの段階で「見に来てよかった」と思ってしまうほどの存在感があった。「上層農民の最高級の曲り家として典型的なもの(遠野市HPより)」とあるように「資産家」の雰囲気が漂っている。きっと昔の人達も、この場所から丘を見上げるようにして「千葉さんのお宅は立派だねー」と話していたに違いない(←イメージ)。そんなことを想像しながら入口で共通券を購入して、家につづくやや急な坂を上がっていく。


千葉家曲がり家
それにしても、古民家を見るとふしぎと心が落ち着いてくるのはなぜなのだろう? 実際に古民家に住んだこともないし、近所に古民家があったわけでもないのに「なつかしい」という気分になってくる。子供のころ「このような場所で遊んだことがあるような気分」にさえなってくる。

そんな不可思議なノスタルジック気分に浸りながら、見事な茅葺きの屋根を眺め写真を撮り展示物に目を凝らし土の感触を楽しんだあとは、早々に次の場所へと移動をしなければいけないのが観光客のつらいところ。次に向かうのは「続石」だ。

続石は遠野物語の中にも登場する石。「さて遠野の町と猿ヶ石川を隔つる向山という山より、綾織村の続石とて珍しき岩のある所の少し上の山に入り、両人別れ別れになり、鳥御前一人はまた少し山を登りしに、あたかも秋の空の日影、西の山の端より四五間ばかりなる時刻なり。ふと大なる岩の陰に赭き顔の男と女とが立ちて何か話をして居るに出逢いたり。(遠野物語)」の「続石とて珍しき岩」が、まさにこの続石なのである。

道路沿いに設置されている駐車スペース(5~6台ほど駐車できる)に車を止めて続石へと続く細い坂道を上がっていく。静かな林の中を息を切らしながら登っていくと、さきほどの「千葉家の曲がり家」で興奮気味だった心持ちが急速に落ち着いてくるのがわかる。そして遠野物語の文章を思い出し「この先には、どのような風景が待っているのだろう」と、少し怖いようなそれでいてわくわくするような気分になってくる。

泣石
もう15分以上歩いたんじゃないか。昨日の物見山よりもきついんじゃないか。と、少し疲れてきたころに視界が開け、木々に引っかかって止まったように見える「泣石」の前に到着。なぜ「泣石」という興味深い名前がつけられたのかは、ぜひみなさんで調べてみていただきたい。

いや、別にまとめるのが面倒だから、というわけではなく「調べる喜び」を知っていただきたいからである・・・。

・・・さて泣石から右の方へ進むと、あった。あれが続石だ。


続石
続石は観光案内の本やパンフレットなどで写真を見てイメージしていたよりも、大きく迫力があった。高さ約5m。手を伸ばしても広げても届くことはない大きさの巨石。そして全力で押したならば、グラグラと揺れて落ちてしまうのではないかと思うような、絶妙のバランスで留まっていた。

近くに寄って岩に手を触れてみると、冷たく、重たく、弁慶ならば動かせたかもしれないが、自分が押したくらいでは少しも動くことはなかった。

今、現代を生きる自分たちが見ても「これは、何か別の不思議な力が加わらなければ、このような状態にはならないのでは」と思ってしまうくらいなのだから、初めてこの岩を見つけた当時の人は単なる自然現象だとは受け取れなかったことだろう。不可思議な力が何かしらの意味を表現するために、この岩を「作った」と考えたのではないだろうか。山の神様からのメッセージ。それとも、いやいや、とにもかくにも自然界に存在する力の大きさの前では、ただ手を合わせるしかないのかもしれない。まさに「遠野物語」の気分を満喫できる場所だった。


ちなみに続石入口から少し下った道沿いにミニチュア(?)の続石があるのでこれもぜひ見ておきたい。実物を見たあとに見ると、ほっこりしますよ。

その3へつづく