ミネペルホネン金沢店へ(高速バスで仙台→金沢への旅 No.10)
金沢21世紀美術館へ・・・そして断念
ホテルに荷物を置いたことで、かなり身軽になった。これならば、まだまだどこまでも歩いて行けそうだ、という気分になる。そして、次に目指すは「21世紀美術館」。一応、クリエイターを名乗っている以上、美術館は押さえておきたいスポットである。市場もひがし茶屋街も大混雑だったが、美術館ならそこまで混まないだろう。そう、気軽に考えて向かったのだが……。
甘かった。そう、完全にアマちゃんだった。チケット売り場の前には長蛇の列。ざっと、見積もっても100人を越えるのではないか、という人の列。しかも、展示室の入り口にも順番を待って並んでいる人の姿が見える。さすがに、これは無理だ。並んでいるだけで、残りの時間が終わってしまうかもしれない。明日(旅の最終日)ならもう少し空いているかもしれないから、明日に賭けよう。せっかくなので、庭に設置されていた作品の前で写真を撮ったあと移動することにした。
ミナペルホネン 金沢店へ
21世紀美術館を後にし、バスに乗る。次に向かうは「ミナペルホネン 金沢店」である。連れがミナペルホネンのファンなので、ここに行きたいと話していたのだった。ちなみに自分は「ミナペルホネン」のことをローマ字読みをして「ミナ パーホネン」と間違って覚えていた。もし私と同じように間違った読み方をしている男性がいたならば、女性の前で知ったかぶりをして恥をかかないように気をつけていただきたい。
店舗へはバス停で降りてから、徒歩で移動する。閑静な住宅街の中を、スマホのマップを見ながら歩いていく。「ほんとうに、こちらで大丈夫なのか?」と思いながらも、マップの矢印が指し示す方向に進んでいくと、あった。一見すると立派なお屋敷だが、門のところに看板が出ている。間違いないここだ。
おじゃまします、と靴を脱いで上がらせてもらう。ほのかに薄暗い気配の室内に、窓から射し込んでくる淡い外の光が、美しくディスプレイされた品をぼんやりと浮かび上がらせている。不思議と居心地がいい。連れは目をキラキラさせながら、感触を確かめるように、そっと品物に手を触れている。乙女心全開になっているようだ。そして、この世界観に囲まれていたならば、そのような気分になることも理解できる。さきほどから、あちらこちらをぐるぐると回っている様子を遠巻きに眺めていると、なんというか、まあ、連れてきてよかった、という気分になる。
訪問した当日は、二階でモリソン小林さんの個展が行われていた。高山植物をモチーフにした作品だった。作品を見ていると、登山をしている時の記憶が蘇ってくるような気がした。天候は晴れ。冷たい空気と、少し強く流れる風。足元の岩陰にひっそりと開いている高山植物。この日本家屋のしっとりとした気配とあいまって、頭の中にはそんな風景が広がっていた。今年の夏は、どこかの山に登りたいな、と思った。
そんな風にして、ミナペルホネンの世界観と個展を堪能しながら気がつくと、それなりの時間が経過していた。そろそろ頃合いだろう、と連れを促すと、いくつか小物を選んでレジに向かっていった。帰り際、店員さんに、どちらからいらしたのですか? と声をかけられる。雨宝院の住職にも同じことを聞かれたから、どこか地元の人ではない気配があるのだろう。仙台からです、と答えると、そんなに遠くからと驚いていた。はい、すごく遠かったです、と答えると笑っていた。
玄関のところで、写真を撮ってもいいですか? と聞くと、快く許可していただけたので連れを立たせて何枚か記念に写真を撮った。このうえない満面の笑顔だったのだが、本人の許可なくお見せするわけにもいかないので、本人なしの写真を掲載しておく。(つづく)