宿泊地の夜(高速バスで仙台→金沢への旅 No.6)

連休中につき、何をするにも長蛇の列


初日は予定よりもスムーズに進んだ。そう、ここまでは。ところが、夕食の場所を探し始めたあたりから、スケージュールが遅れ始めてしまった。

まず最初に「金沢は、回転寿しのレベルが高いらしい」ということを耳にしたため、回転寿しの店に行ったところ、最初の店は二時間待ちコース。もう一件は「本日の受付は終了」状態。仕方がないので、駅ビルに入っている飲食店をぐるぐると回り、さらに隣のビルに移動し、比較的並んでいる人が少なかった「天丼の店」で食事をすることにした。

ようやく席に座れた、という安堵感もスパイスになって、うまいうまい、と普段なら残してしまうような大盛りの天丼を、文字通り「ぺろり」と食べてしまった。うまかった。食べ終わってから店内を見渡してみると、隣と後ろの席が外国人のみなさんだったということに気がついた。やはり日本での食事といえば「てんぷら」が人気なのだろうか、などと思いながら、お茶を飲んで店を出た。

金沢から能美へ電車で移動

今日は、能美市根上に宿をとった。金沢駅からは、北陸本線で30分ほどの移動になる。昨晩が車中泊だったので、少しでも早くチェックインしたいと思っていたのだが、ホームで待っても電車がやってこない。電車を待つ人の列が長くなっていく。いったいどうしたのだろう、と思っていると、車両トラブルで一本分遅れるというアナウンスがあった。

食事をする場所を探している時間と、車両トラブルの時間で、予定よりもだいぶ時間が押してしまった。普段なら、まあ仕方ない、と凌ぐのだが疲労もピークとなり、だんだんぼんやりとしてくる。本当に、次の電車はやってくるのだろうか? などと疑心暗鬼になりつつ肌寒いホームに立って待っていると、ようやく電車がやってきた。ほぼ満員状態の車両に乗り込んで、ひと息つく。横の家族が「電車が遅れてバスに乗れないから、迎えにきてもらわないといけない」と話している声を耳にしながら、電車に揺られているうちに目的地についた。

ホテルに向かいチェックイン待ちをしていると、近くにいた人が「連休でどこも混雑していますね」と話しかけてきた。「さっきもスーパーに寄ったらもう閉店していて、無駄足でした」「タイミングが合わない時は、合わないですよね」などと雑談をしたあと、ではお互いにがんばりましょう、と会釈をして別れた。

コンビニアイスは、近所の散歩気分

部屋に荷物を置いてから、近くのコンビニまで飲み物などを買いにでかけることにした。なんとなくアイスが食べたくなったので、ひとつ買って連れと半分ずつ食べた。アイスを食べながら夜の道を歩いていると、なんだか近所を散歩しているような気分になる。

ふと、高校生の時に友人の家に泊まって遊んでいた時のことを思い出した。深夜にそっとみんなで家を出て、近くのコンビニに買い出しへ行く。缶コーヒーやらお菓子やら、とくに必要のないようなものを買い込み、それらが入ったコンビニの白い袋を持って歩いて帰る。その瞬間が、無性に楽しかった。とくに何をしている訳でもないのに、充実した時間を過ごしているような気がしていた。そして今も、同じようなことをしている。遠くの知らない場所にきて、アイスを食べながらコンビニの白い袋を持って夜の町を歩いている。

部屋にもどり、風呂にはいり、ベットに横になる。ガイドブックを眺めながら、今日のできごとと、明日のざっくりとした予定を話し合っているうちに、眠気が押し寄せてきた。明日は、できるだけ早起きをして行動したいけれど、ちゃんと起きられるだろうか。天気は良さそうだから、外が明るくなれば自然に目がさめるかな。そんなことを考えながら、買ってきた炭酸水を多めに飲み、撮影した写真の整理などをしたあとライトを消して眠った。

ホームラン通りは、あの選手の出身地

朝がきた。カーテンを開けて空を見上げる。今日も天気予報通りの、心地よい晴天だ。少し予定より遅めになったが、まあまあ早めの時間帯に起きることができた。顔を洗ったり、荷物の整理をしながら、出発の準備をする。

ふと、窓の外を見ると、昨晩チェックインの時に話をした人が、ホテルの前で家族と写真を撮っているのが見えた。今日もあの方は、家族のために車を運転して移動するのだろう。がんばってください、と頭の中でエールを送り、自分たちも出発することにする。


昨晩到着した時は夜間だったので気がつかなかったのだが、道路の脇に「ホームラン通り」というプレートが設置されていることに気がついた。気になって調べてみると、能美市根上は、野球の松井秀喜氏の出身地なのだそうだ。野球に詳しくない自分でも知っているほど、有名な松井選手の出身地に宿泊できて光栄である。この旅のあとに、ホームランをかっ飛ばすような良いできごとを呼び込みたいものだ、などと考えながら写真を撮った。



駅の構内に、地元の生徒と思われる写真を使用したポスターが貼られていた。コピーがなかったので、自分ならこのポスターにどんなコピーを書くだろう、としばし考える。静かで落ち着いた雰囲気の町だったから、強い言葉で訴えるよりも心地よくつながっていく言葉の方がいいだろうか。この二人は、両方ともベースを持っているけれど、能美市ではベースが流行っているのだろうか。ベース? ベースボール? などと、ぼんやり考えているうちに出発の時間になったので、改札へ向かった。(つづく

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