2017年10月16日月曜日

はじめての奈良旅(4)鹿に「シカせんべい」を。

奈良のシカに鹿せんべいを


三日目の朝がきた。旅は、実際に旅をしている時間よりも計画や準備をしている時間の方が長い。今回の旅も、すでに折り返しを過ぎてしまった。奥の細道に「日々旅にして旅を栖とす」という一節があるけれど、将来は旅をしながら生活してみたいとも思う。そして、意外とそれは可能なのではないか、とも思っている。今後の目標のひとつとしたい。

さて、三日目の朝がきた。初日の夜は体調を崩し、今回はここで終了かとも感じたのだが、その後は何事もなく元気に過ごすことができている。荒天の予想だった天気予報も、小雨程度で済んでくれた。色々な意味で、ここまでは快調である。有難し。昨晩の宿は「近鉄奈良駅」から徒歩数分という好位置にあったので、ここから奈良公園までは、ほんの目と鼻の先。チェックアウトをして出発する。

宿を出て、朝の人気もまばらな道を歩く。まだ開店していない店も多い。ゆるやかな登りになっている道を歩いていると、足元に鹿の糞が転がっているのを見つけた。おお、いよいよ「奈良の鹿」に対面できる。にわかに気分が上がり、歩く速度が少しだけ早くなる。




野生動物としての、奈良の鹿


今回、奈良に来るまでは「鹿は、公園で管理され飼育されている」と思っていた。夜になったら寝る場所があり、朝になったら外に出されるような仕組みなのかと思っていた。ところが実際は「奈良公園に生息するシカは国の天然記念物に指定されている野生動物です。決して飼育されている動物ではありません。(参考:奈良県公式ホームページ)ということだった。そう、放し飼い以前に、野生の動物だったのだ。

さらに「奈良公園には広大なシバ地があり、シカはシバに強く依存している。その他ススキやイネ科植物などを食べて生活している。鹿せんべいはシカにとってはおやつです。(参考:奈良の鹿愛護会ホームページ)」とのこと。ずっと「鹿せんべい」が主食だと思い込んでいたのだが「おやつ」だったのだ。観光客が少ない時は、せんべいの量が少なくなって腹が減るだろうな、と思い込んでいたのは勘違いだったのだ。シカはシバを食べる。せんべいはおやつ。今回学んだ情報のひとつだった。



そんなことを考えつつ、歩いていると題目を唱える声が聞こえてきた。階段を上がると、静かに移動していく僧侶の姿が見えた。興福寺に到着した。少し早い時間帯のせいか、人の姿もまばらである。東金堂の拝観時間も9時からである。ここへは、ぐるりと回ってからまた戻ってくることにして、まずは奈良公園へ向かって歩いていくことにする。


そして、出会う。やあ、こんにちは。あなたが、僕にとって「はじめての奈良の鹿」です。こんにちはこんにちは。おそるおそる近づいて、写真を撮る。逃げはしないが、こちらに興味も示さない。興奮しているのは、人間だけである。「鹿せんべいは、どこで売っているのだ? はやく鹿せんべいをあげたい」と、普段は冷静さを装っている(?)くせに、鹿を目の前にして子供のようにわくわくしている自分に気がつく。



鹿せんべいを、めぐる攻防


周辺に「鹿せんべい」を販売しているところは見つからなかったので、過ぎ行く鹿を横目に、東大寺の方を目指して進む。10分ほども歩いたところで東大寺へと続く道へ到着した。そして「鹿せんべい」を販売しているところも発見した。連れが、さっそく買いに行き、せんべいを手にした途端、わらわらと周囲から鹿が集まってくる。そう、みんな知っているのだ。「この人は、今『せんべい』を買った。さあ、はやくおくれ」と。


上の写真は、うしろから「もっと、おくれ」と、鹿につつかれて驚いている筆者である。目は可愛いが、そこは野生動物。なかなかの迫力である。しかし、やはり可愛いので、思わず笑顔になってしまう。ふと昔自宅で一緒に暮らしていた犬のことを思い出す。あいつも、こんな風に食べ物をねだったよなあ、と懐かしくも温かい気持ちになる。

鹿たちは、一度せんべいをあげると「もっとあるよね?」と、ばかりに後をついてくるのだが「もうないよ」と両手を広げてみせると、ふーん、と他のところへ行ってしまう。しかし、袋の中に手をいれると、すすっ、と周囲から集まってくる。良く観察しているものだ、と関心する。


ちなみに「鹿せんべい」は、このような証紙に括られて販売されている。ひとつ150円。証紙には「このせんべい代は可愛いシカの保護にあてます」と印字されていた。ほんとうにわずかばかりでも、保護の役に立てるのはうれしい。そして、今回の奈良旅の目的のひとつだった「鹿に、鹿せんべいをあげる」も達成することができた。シカありがとう。

つづき はじめての奈良旅(5)東大寺へいこう