上高地を歩く(4の2)大正池から自然研究路を通り河童橋へ 秋の長野を巡る旅
バスは大正池で降りた。ここから梓川に沿って、河童橋を目指す「自然研究路」というトレッキングコースを歩いていく。
バスを降り、大正池のそばに近づいていく。朝もやが湖面に、ぼんやりと漂っている。底の底まで見えているのではないか、と思うほどの透明な水。その上に、穂高連峰の山々がくっきりと映っている。
太陽に力強く照らされた山肌と、まだ静寂を保っている湖面の静けさのコントラストが、現実の世界とは思えないような不可思議な空間を作っている。池に向かって左側に見えるのが焼岳だ。あの山が噴火したことで、この大正池ができたという。
みんな足を止めて、盛んに写真を撮影している。通常の観光地のように、ピースサインをして記念写真を撮っている人たちよりも、山々にレンズを向けて何枚も何枚もシャッターを切っている人の方が多いように思える。ひとしきり山と池の写真を撮影してから、忘れていたかのように記念写真を撮る。ああそうだ、人物の写真も撮っておかないとね、といった感じになってしまうほど、ここの風景は美しく圧倒的な存在感だった。
立ち去りがたい衝動を感じつつ、次の場所へと向かっていく。森の中を抜け、木道の上をポクポクと歩いていく。暑くもなく寒くもない。時折降り注いでくる太陽の光が、普段の光よりも白く鮮烈なものに感じる。ちいさな子供を連れた母親が、先へ先へ行こうとする子供を呼び止める。このような場所では、大人よりも子供の方がずっと元気だ。早く、早く、と道の先の方へと走るようにして進んでいく。
僕は、いつも山歩きをする時は、時間を何度も見て地図と自分の位置を確認するようにしている。山の中で迷うのは一瞬だし、それは大きなトラブルにつながることも多いからだ。
でも、ここ上高地では、ほとんど時計を見ることがなかった。道も整備されているし、たくさんの人が歩いているから、ということもある。時間を確認することで現実の世界に戻りたくなかったのかもしれないし、ただ単に時間を確認するのを忘れていたのかもしれない。そのどちらなのか、もはや自分でもわからないのだけど、気がついたら田代橋に到着していた。穂高連峰と梓川の流れを眺めながら、上高地温泉ホテルの前で小休止をする。
ホテルの売店をのぞくと、ポテトチップスの袋がパンパンにふくれているのを見つけた。気圧の関係なのだろう。ここはやはり山なのだ、と改めて感じる。自分が上高地を歩いているのだ、ということを実感する。特に買い物の予定はなかったのだけど、売店の中を眺めているうちに、上高地のステッカーが販売されているのを見つけた。見た瞬間に「なぜか欲しく」なった。旅先で、自分のための買い物をすることは、ほとんどないのに、なぜか無性に欲しくなってしまった。もう、ほとんど購入する気分になってはいたのだけど、止めた。河童橋周辺の店で販売していたら、そこで買おう。もし売っていなかったら、縁がなかったということだ。と、考えて歩き始める。天気は、相変わらず良い。快晴無風。まもなく河童橋だ。
秋の長野をめぐる旅 上高地(3)へ
秋の長野を巡る旅(2)大王わさび農場へ
秋の長野を巡る旅(3)安曇野ちひろ美術館
秋の長野を巡る旅(4)上高地へ行く(1)
秋の長野を巡る旅(4の2)上高地へ行く&歩く(2)
秋の長野を巡る旅(4の3) 上高地へ行く&歩く&食べる(3)
秋の長野を巡る旅(5)渋温泉で湯巡りに挑戦
バスを降り、大正池のそばに近づいていく。朝もやが湖面に、ぼんやりと漂っている。底の底まで見えているのではないか、と思うほどの透明な水。その上に、穂高連峰の山々がくっきりと映っている。
太陽に力強く照らされた山肌と、まだ静寂を保っている湖面の静けさのコントラストが、現実の世界とは思えないような不可思議な空間を作っている。池に向かって左側に見えるのが焼岳だ。あの山が噴火したことで、この大正池ができたという。
みんな足を止めて、盛んに写真を撮影している。通常の観光地のように、ピースサインをして記念写真を撮っている人たちよりも、山々にレンズを向けて何枚も何枚もシャッターを切っている人の方が多いように思える。ひとしきり山と池の写真を撮影してから、忘れていたかのように記念写真を撮る。ああそうだ、人物の写真も撮っておかないとね、といった感じになってしまうほど、ここの風景は美しく圧倒的な存在感だった。
立ち去りがたい衝動を感じつつ、次の場所へと向かっていく。森の中を抜け、木道の上をポクポクと歩いていく。暑くもなく寒くもない。時折降り注いでくる太陽の光が、普段の光よりも白く鮮烈なものに感じる。ちいさな子供を連れた母親が、先へ先へ行こうとする子供を呼び止める。このような場所では、大人よりも子供の方がずっと元気だ。早く、早く、と道の先の方へと走るようにして進んでいく。
僕は、いつも山歩きをする時は、時間を何度も見て地図と自分の位置を確認するようにしている。山の中で迷うのは一瞬だし、それは大きなトラブルにつながることも多いからだ。
でも、ここ上高地では、ほとんど時計を見ることがなかった。道も整備されているし、たくさんの人が歩いているから、ということもある。時間を確認することで現実の世界に戻りたくなかったのかもしれないし、ただ単に時間を確認するのを忘れていたのかもしれない。そのどちらなのか、もはや自分でもわからないのだけど、気がついたら田代橋に到着していた。穂高連峰と梓川の流れを眺めながら、上高地温泉ホテルの前で小休止をする。
ホテルの売店をのぞくと、ポテトチップスの袋がパンパンにふくれているのを見つけた。気圧の関係なのだろう。ここはやはり山なのだ、と改めて感じる。自分が上高地を歩いているのだ、ということを実感する。特に買い物の予定はなかったのだけど、売店の中を眺めているうちに、上高地のステッカーが販売されているのを見つけた。見た瞬間に「なぜか欲しく」なった。旅先で、自分のための買い物をすることは、ほとんどないのに、なぜか無性に欲しくなってしまった。もう、ほとんど購入する気分になってはいたのだけど、止めた。河童橋周辺の店で販売していたら、そこで買おう。もし売っていなかったら、縁がなかったということだ。と、考えて歩き始める。天気は、相変わらず良い。快晴無風。まもなく河童橋だ。
秋の長野をめぐる旅 上高地(3)へ
秋の長野をめぐる旅 目次
秋の長野を巡る旅(1)仙台から出発秋の長野を巡る旅(2)大王わさび農場へ
秋の長野を巡る旅(3)安曇野ちひろ美術館
秋の長野を巡る旅(4)上高地へ行く(1)
秋の長野を巡る旅(4の2)上高地へ行く&歩く(2)
秋の長野を巡る旅(4の3) 上高地へ行く&歩く&食べる(3)
秋の長野を巡る旅(5)渋温泉で湯巡りに挑戦